Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston July 2023
日本のみなさん、こんにちは。
前回、「牛乳に含まれるタンパク質(カゼイン)に限らず、すべての動物性食品に含まれるタンパク質にはガンへの誘発性がある」理由についてお話ししました。
それでもまだ、牛乳は「自然が与えてくれた完全食品である」という教えを捨てきれずにいる方も多いのではないでしょうか。それはきっと、戦後生まれの日本人が「牛乳はカルシウムの宝庫なので、骨の発育のためには欠かせない食品」と子供の頃から教え込まれてきているからなのかもしれません。
今回は、牛乳は「自然が与えてくれた完全食品ではない」ということを、タンパク質の面からだけでなく、ほかの面からも検証していきたいと思います。
牛乳は仔牛のための食べ物であり、人間のためのものではありません。牛のミルクに含まれるたんぱく質(カゼイン)は、人間の母乳に含まれるカゼイン量の3倍もあります。
これは生まれたばかりの牛の赤ちゃんの体重(約100ポンド/45.4キログラム)を47日間で2倍にし、1年後には誕生時の10倍の巨大な体(約1000ポンド/454キログラム)にするために必要だからです。
したがって、人間の赤ちゃんが牛のミルクで育てられると、ロケット燃料を注入したかのように、めざましい勢いで成長していきます。
しかし、分解しきれなかったカゼインが血液中に吸収され、アレルギー疾患や中耳炎、乳幼児突然死症候群、扁桃腺炎ほか、さまざまなトラブルを起こすことになります。
人間も含めて動物は、離乳期を過ぎるとカゼインを分解する酵素「レニン」の分泌が止まります。歯が生えてくると、もうミルクは必要ないからです。
したがって、動物界では離乳期を過ぎると母親のお乳(ちち)を飲むことはありませんが、人間はいくつになっても牛乳を飲み続けています。私たちの多くは離乳期を過ぎても乳離れせずに、ほかの動物のお乳を生涯にわたって飲み続けているのです。
牛のミルクを飲み続けていると、ガンのリスクも高くなります。牛のミルクタンパク(カゼイン)は、ガン細胞の形成と成長におけるメカニズムのスイッチを「ON」にしてしまうことは、複数の研究で確認されています。
牛乳・乳製品の摂取量増加と、乳ガン・前立腺ガン・大腸ガンなどの罹患率と死亡率の増加は相関関係にあります。これらのガンは牛乳摂取習慣が定着したこの60年余りの間に激増してきているのです。
さらに牛乳には、エストロゲンほかの性ホルモンや、IGF-1(インスリン様成長因子)ほかの生物活性ホルモンが大量に含まれていて、これらも乳ガンや前立腺ガンの高いリスク因子となっています。
牛乳はまた、高脂肪食品です(カロリーの51%は脂肪からのもの)。体が必要とする以上の脂肪(注)を摂取することは、肥満の原因となるばかりか、体内で合成されるエストロゲンレベルを上昇させ、乳ガンや前立腺ガンのリスクを高めていくことになります。
(注)厚生労働省の「日本人の摂取基準」(2020年度)では、年齢にかかわらず、脂肪の摂取目標量を総摂取カロリーの20~30%としていますが、欧米のプラントベース栄養学の医師たちの見解は、成人の場合10%(最大で15%)としています。
牛乳には、抗生物質や環境汚染物質(ダイオキシン、PCBなど、体内で疑似エストロゲンとして作用する)などの有害な物質が含まれていることも忘れてはなりません。
さらに、ミルクタンパク(カゼイン)は、体内で分解されると、「カゾモルフィン」と呼ばれるモルヒネ様の物質を放出します。
この物質はモルヒネやヘロイン、あるいは麻薬などと同じ受容体に結合し、脳内ホルモン「ドーパミン」(「幸せホルモン」とも呼ばれる快楽物質)の分泌を高めるため、私たちは牛乳、ヨーグルト、チーズのような、カゼインを含む食品を常用していると、やめられなくなってしまいます。
もちろん、カゾモルフィンはモルヒネ、ヘロイン、麻薬ほどの強さはありませんが、夢中にさせるには十分な強さなのです。
カゼインが分解されるとカゾモルフィンを放出するのは、赤ちゃんにとってミルクは命の必需品のため、「続けさせる」という私たちの創造主の意図なのです。しかし、乳幼児の頃から常用し続けていると、すでに見てきたように、さまざまな健康上のトラブルの要因となってしまいます。
特にチーズには、カゼインが高濃度に含まれていますので、チーズを常用しているとやめられなくなります。多くの人がピザが好きなのはそのためですが、チーズはきわめて高脂肪の食品なので、肥満、そして乳ガンや前立腺ガンのリスクを高めてしまうことになります。
ここまでお読みになったみなさんの中には、それでも「牛乳はカルシウムの宝庫なので、子供の骨の発育や成長にとって欠かせないし、高齢者にとっては特に骨を丈夫に保ち、骨粗鬆症や骨折を防ぐのに不可欠である」といわれているため、牛乳をやめるわけにはいかない、と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、子供の成長に必要な栄養は、牛乳のカルシウムに頼らなくても、「プラントベースでホールフードの食事」(未精製未加工の植物性食品中心の食事)から十分摂取でき、子供はしっかりと成長していくことができます。
昔の日本人の体格が貧弱だったのは、肉や乳製品を摂取していなかったからではなく、環境衛生が貧しかったこと、十分のカロリーを摂取していなかったことなどのほうがずっと大きな要因です。
豊富な果物や緑の野菜をたくさんとり、木の実や種子類からヘルシーな脂肪を摂取することを心がけ、睡眠を十分にとり、戸外で日光に当たりながら活発に体を動かしていれば、子供は健康に育ち、着実に成長していきます。
牛乳・乳製品をとっている子供たちに比べ、成長のスピードのピークが来るのがやや遅い点はありますが、心配には及びません。「プラントベースの食事」でスクスク育っている子供たちは世界中にたくさんいます。
また、高齢者の骨を丈夫に保つために牛乳や乳製品をすすめることは、最悪のアドバイスです。牛乳を飲めば飲むほど、チーズを食べれば食べるほど、骨はもろくなり、骨折のリスクを高めていくことになるからです。
「牛乳には吸収されやすいカルシウムが豊富に含まれており、丈夫な骨を作る」という乳業界の主張は真実ではありません。緑葉野菜のほうがずっとカルシウム量が多く、また吸収されやすい、すぐれたカルシウム源なのです。
世界中で牛乳を飲む人口はおよそ全体の3割、残りの7割は牛乳を飲んでいないのですが、彼らは骨粗鬆症のトラブルで悩まされてはいません。
反対にアメリカやヨーロッパの酪農国の人々をはじめ、牛乳を多く飲んでいる人のほうに骨折が多く、骨粗鬆症予防に牛乳は役立っていないことを、信頼のおける多数の研究が証明しています。
牛乳に関しては、『女性のためのナチュラル・ハイジーン』『50代からの超健康革命』、および『子供たちは何を食べればいいのか』(いずれも、グスコー出版)にさらに詳しく記されていますので、参考になさってください。
(文責:松田麻美子)