2023年4月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston April. 2023

日本のみなさん、こんにちは。

みなさんは「健康も病気も自分が食べているものによってつくられる」、ということにお気づきでしょうか。

19世紀初めに活躍し、「生理学の父」として、また「グラハムクラッカー」の生みの親としても知られるシルベスター・グラハム博士は、生理学の名著として知られる『The Science of Human Life』(人間の生命科学理論)の中で、病気の根本原因は「生命の法則」を犯すような食習慣やライフスタイルであり、これを改めれば病気は必ず避けられる、と述べています。

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グラハム博士は言います。

健康なとき、人は必要以上に飲んだり食べたりして体のエネルギーを大量に浪費する。そのあげくエネルギーは枯渇し、体が正しく機能できなくなり病気になる。

体の正常な機能が妨げられ、快適な状態が維持できなくなると、不快な症状に悩まされるようなるが、運が悪かったか、あるいは病気は体の外からもたらされるものだと捉える。

自分が毎日行なっている行為とは何ら関係がないと思っている彼らは、「病気という悪魔に取りつかれるとは何と不運なことだろう」と自分自身を哀れむ。

病気の予防や症状の改善のために自分でできることは何もないと考え、一刻も早く不快な症状から救われようと医者のところへ駆けつける。

患者が医者に求めることは、苦しい病状をなくすか緩和させるかしてもらうことだけで、どうして病気になったのか、その根本原因を尋ねるようなことはしない。症状がなくなれば、医者の評判は高まり、順調に、そして豊かに報われることになる。

人々は、薬そのものの中に直ちに健康を与えてくれる力があり、それを処方する医師は患者の体から病気をとり除き、健康にしてくれることができると信じているようだ。

グラハム博士が指摘していた当時の人々の薬に対する認識は、170年余り経過した現在でさえ変わっていないようです。

高血圧が原因で頭痛がひどかったり、足や膝に水がたまったりしている患者は、不快な症状をなくすか緩和させるかしてもらいたくて、医者に行きます。医師は症状を診察し、薬を処方してくれます。

薬の服用で血圧は下がり、症状は緩和されます。症状が緩和されたので治ったと思って服用をやめると、血圧は再び上昇していき、頭痛やむくみなどの不快な症状が戻ってきます。血圧の薬をずっと服用し続けるように言われるのはそのためです。

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降圧剤の摂取によって、ひとまず血圧計の目盛りが正常範囲になったとしても、それで高血圧が治ったわけではありません。血管へのダメージは着実に進行していきます。なぜなら、高血圧の根本原因をとり除いていないからです。

血管へのダメージは、炎症➡潰瘍➡硬化(動脈硬化や腎硬化症)へと進み、心不全や心筋梗塞、あるいは腎不全などをわずらうことになります。

腎不全はやがて人工透析が必要な状態にまで悪化していきます。高血圧の最大原因は、体が本来必要とする以上の塩分摂取(1日2グラム以上)、油や動物性食品などを含む食生活にあります。

降圧剤によって血圧は低下しても、最低血圧が下がりすぎて不整脈を引き起こす可能性も高くなります。これは心不全や脳梗塞につながります。つまり、薬の服用で血圧計の目盛りが正常範囲であっても、高血圧が治ったわけではなく、致命的な状態へと悪化していくことを、降圧剤の服用者は知っておかねばなりません。

血糖値が高い人の場合も同様です。血糖値が高くなると、疲労感、のどの渇き、皮膚の乾燥やかゆみ、手足の感覚低下、または指へのチクチク感、感染症にかかりやすくなる、頻尿、目のかすみ、ED(性機能の低下)、傷が治りにくい、などの症状が出てきます。

そのため医者に行くと、血糖値が高くなっていることを指摘され、血糖値を下げる薬を処方されます。そして生涯とり続けるよう言われます。服用を中止すると、血糖値は再び上昇し、不快な症状が戻ってくるからです。

薬をとり続けている限り、血糖値の数値は通常コントロールされています(個人差があるため、薬でコントロールできない場合もある)。しかし、だからといって、糖尿病が改善されたわけではありません。糖尿病は進行し続け、ある日突然、糖尿病性網膜症で視力を失う、あるいは脚や足先への血流が悪化して壊死し、片脚(足)切断という悲劇が起こりうるのです。

また、最近では、血糖値の高い人に、糖質制限ダイエットやケトジェニックダイエット、MECダイエットなどをすすめる医師も少なくありません。これらのダイエット法は、いずれも炭水化物の摂取量を制限するというものです(程度の差はさまざま)。

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炭水化物(糖質、以下同)の摂取量を減らすと血糖値は減少します。
しかし、このような食生活を続けていると、心臓血管疾患や腎疾患、アルツハイマー病、骨粗鬆症など、深刻な別の疾患へと至ることになります。

炭水化物の摂取制限をすすめる医師たちは、「血糖値上昇の根本原因は炭水化物にある」という、致命的な誤りを犯しています。血糖値の上昇は、炭水化物によるものではありません。高脂肪の食生活のためなのです。

高脂肪の食生活を長年続けていると、細胞内に余計な脂肪がため込まれ、その結果、血液中の糖を細胞に運ぶ働きをしているインスリンに対して、細胞の表面にあるインスリン受容体の感度が悪くなり、インスリンが糖を運んできたことを受容体が察知できなくなるのです。この状態を「インスリン抵抗」といいます。

「インスリン抵抗」のために、細胞表面にあるインスリン受容体にインスリンが接続できません(画像④参照。インスリン受容体の鍵穴が過剰な脂肪のために詰まっていて、インスリン(鍵)が働かない状態をイメージしてください)。

インスリンによって運ばれてきたブドウ糖は、細胞の中に入ることができないため、血液中に糖があふれ、血糖値が高い状態が続くことになります。これが糖尿病です。

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高脂肪の食習慣をやめれば、インスリン受容体の感度は改善され、血糖値が上昇することはありません。きわめて低塩で砂糖や油を含まない未精製未加工のプラントベースの食事をしている限り、ご飯や果物を食べても、血糖値は正常範囲内にコントロールすることが可能なのですが、このことを日本の多くの医師は認識していません。

これでおわかりのように、根本原因をとり除かない現代医療は、決して「ヘルスケア」ではなく、症状の「コントロールケア」、あるいは「マネージケア」でしかありません。

「生命の法則」に従って生きることを心がけ、自分が食べるものを意識して選ぶことが、自分の体を健康へと導く最短・最良の道なのです。

(文責:松田麻美子)