Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston Dec. 2022
日本のみなさん、こんにちは。
今年も残りあとひと月となりました。この一年も昨年同様、コロナ禍に翻弄される日々だったという方も少なくないことでしょう。
しかし、ナチュラル・ハイジーンの健康理論が教えるスーパーヘルスを極めるための「健康の7大要素」(『50代からの超健康革命』グスコー出版参照)を毎日のライフスタイルにとり入れている限り、新型コロナウイルスに打ち克つことは可能です。
【https://gsco-publishing.jp/books/h-50dai/】
「健康の7大要素」のうち、特に「食物(プラントベースのホールフードの食事)」は、新型コロナにまつわる一連のトラブルばかりか、インフルエンザなどの感染症をはじめ、あらゆる病気の予防・改善に役立つことが、膨大な研究によって裏付けられています。
今年の8月以来、この「新着メッセージ」では、「プラントベースの食事は体が必要とするすべての栄養を十分にとれる」ことを、さまざまな面からご紹介してきました。
今回は、「鉄分」についてとりあげます。「鉄分を摂取するには赤身肉やレバーなど、ヘム鉄が豊富な動物性食品を食べる必要があり、野菜中心では鉄不足になる」と思っている人が少なくありません。
栄養士たちもほとんどがこの考え方に賛同していますし、きっとみなさんも学校でそう教えられてきたことでしょう。特に閉経前の女性は貧血を防ぐ意味でも、「赤身肉やレバーなどを積極的に食べるべき」と栄養士や医師からすすめられてきているのではないでしょうか。
10代から20代の頃、私もひどい貧血に悩まされていて、生理のときに意識を失って倒れるという経験を何度もしてきました。医師からは毎日レバーを食べることと、鉄のサプリメントをとることをすすめられ、1日100ミリグラムものサプリメントを使っていたことがありました。今となってみれば、これは最悪のアドバイスでした。
鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、「ヘム鉄」は主に肉類(レバーを含む)に含まれます。肉類の中の鉄の50~60%は「ヘム鉄」で、バイオアベイラビリティ(体が栄養として利用できる量)は15~35%といわれています。
一方、「非ヘム鉄」は植物と肉類の両方に含まれていますが、バイオアベイラビリティは1~23%で、「ヘム鉄」よりずっと低くなります。栄養士たちが鉄分補給に肉類をすすめるのは、「ヘム鉄のほうが吸収率が高い」という理由からです。
しかし実のところ、バイオアベイラビリティは、その人の体の生理的必要量により異なります。鉄分が不足している人の吸収率は、体内に鉄を豊富に蓄えている人の10倍にもなることがあり、体は鉄分が不足していると察知すると吸収率を高めるのです(注1)。
(注1)「Journal of Academy of Nutrition and Dietetics」2016;116(12):1970-1980.
「非ベジタリアン」「ベジタリアン」「ヴィーガン」の各グループごとの鉄分摂取量を比較した世界的な研究によると、3件ともヴィーガンのグループが最も多く摂取しています(画像③参照)。
ヴィーガンの場合、鉄分摂取量は少なくても、吸収率が高いことは明らかです。研究によれば、ベジタリアンやヴィーガンの鉄不足のリスクは高くないといいます。ただし、生理のある女性の場合は月ごとに血液を失っていますので、推奨摂取量よりも多めに摂取する必要があります(注2)。
(注2)「Nutrients」2021;13(9):2964.
日本人女性を対象にした厚生労働省の推奨量は、生理がない場合は1日6~7ミリグラムですが、生理がある場合は10.5ミリグラムとされています。
体内の貯蔵鉄の量を測定するための「血清フェリチン検査」で数値が低いと、一般的に鉄欠乏性貧血や潜在性鉄欠乏症と診断され、鉄剤が処方されます(注3)。
(注3)フェリチンとは、体内で鉄をためておく「貯蔵鉄」の働きを持つタンパク質で、血液中のフェリチン値は全身の貯蔵鉄量と相関性が高いため、体内の貯蔵鉄の量を推定する検査として用いられます。
しかし、フェリチン値が低くても、基準値(注4)の範囲内であれば、体調に影響はなく、食事で鉄分の損失分を補う場合は不利にはならないようだ、ということを研究が明らかにしています。
(注4)12~249.9ng/mlが基準の範囲とされていますが、測定方法によって基準値として示される値はさまざまで、男性:20~250ng/ml、女性:10~80ng/mlとされているものもあります。
研究者らによれば、血清フェリチン値が高いほど心臓病のような慢性疾患のリスクが高くなるため、逆に有利となる可能性があるといいます(注5)。
したがって、フェリチン値が低いからといってサプリメントで鉄分を補うことは、決して賢明な選択ではないのです。
(注5)「BMC Medicine」2012;10:119.
【体内の鉄のレベルを最大限にしておくための3つのポイント】
(1)各食品群の中から、鉄分が豊富な食品を選ぶこと
・豆類(特にレンズ豆、ヒヨコ豆など)、納豆、豆腐など
・穀類(特にアマランス、テフ、キヌア、小麦、ソルガム(モロコシ)など)
・すべてのシード(種子)類(特にカボチャの種)
・ナッツ類(カシューナッツ、松の実、アーモンド、ブラジルナッツなど)
・野菜(エンドウ豆、絹サヤ、緑葉野菜など)
・果物(アサイ、プルーン、ドライフルーツなど)
・そのほか鉄分が強化された代替肉、黒糖蜜など
(2)下記の鉄を吸収阻害する物質の摂取量は適量にとどめておくこと
・フィチン酸
・ポリフェノール系化合物
・亜鉛(サプリメントとして単一でとる場合)
・カルシウムと乳製品
・小麦ふすま(食べ物の上に振りかけてとると、鉄ほかのミネラルの吸収が50~90%阻害される)
・タンニン(お茶にはタンニンが含まれているので食事と一緒にとらず、時間を空けてとること)
(3)下記の鉄を吸収促進する物質の摂取量を増やすこと
・ビタミンCに富む食品と有機酸(酢酸・クエン酸・リンゴ酸など、穀物酢や果実酢に含まれる)
・ネギ類、ニンニク、ニラなどアリウム属(ネギ属)の野菜
・ニンジンなどのベータカロテンに富む食品
・トウガラシ 、ターメリック、ショウガなどのスパイス類
なお、鋳鉄の鍋で調理すると鉄分の含有量がさらにアップするという指摘もありますが、「ナチュラル・ハイジーン」ではすすめません。鋳鉄の鍋の鉄は、インオーガニック(無機)ミネラルのため体が栄養として利用できないからです。
体が利用できるミネラルは、植物によって地面から吸収されたミネラル類が植物の体内でオーガニック(有機)の形に変えられたものだけ、というのが「ナチュラル・ハイジーン」の見解です。
【赤身肉やレバーは鉄の宝庫、と信じている人へ】
肉類に含まれるヘム鉄は、体内で酸化され、心臓血管疾患やアルツハイマー病などのリスクを高めていくことになります。さらに肉類をとることは、体に有害な物質(2022年11月度メッセージ」参照)を多数とり込むことにつながり、ガン、心臓血管疾患、糖尿病ほか、さまざまな病気を引き起こすリスクを高めていきます。
一方、豆類は、肉類に含まれるヘム鉄のように体内で鉄を酸化させることがなく、しかも体が必要とする分だけが吸収される形で摂取することができます。タンパク質も豊富に含まれています。どちらが賢明な選択かは一目瞭然です。
メディアは新型コロナの第8波に入りつつあるとして、人々の不安を掻き立て、ワクチン接種を盛んにすすめていますが、こうしたニュースに惑わされず、「ナチュラル・ハイジーン」のすすめる「健康の7大要素」をとり入れることでハイレベルの健康を維持し、みなさんが新しい年を笑顔で迎えられますことを願っています。
(文責:松田麻美子)