Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston July. 2022
日本のみなさん、こんにちは。
前回、「牛乳や乳製品は私たちの食べ物ではない」ということを述べましたが、このことは牛乳や乳製品に限らず、ほかの動物性食品についても当てはまります。それは、私たち人類は「肉食動物」ではないからです。
世界的権威の生物学者・解剖学者・人類学者たちが、人類は「肉食動物」ではなく、チンパンジーやゴリラと同じ「果食動物」の仲間であることを認めています。人間の体は水分を豊富に含んだ果物と野菜から滋養分を受け取るようにつくられているのです。
人間の手は非常に器用にできていて、果物をもぎ取り集めることができるし、手首が回転する仕組みになっているので皮を剥くこともできます。しかし、そうした行動は肉食動物にはできません。
また、私たちの目は色の識別が可能なので果物が熟しているかどうかを見分けられますが、肉食動物にはできません。
私たちの歯は肉食動物のような牙はなく、犬歯やほかの歯の長さが同じで、果物を食べるのに理想的な形をしています。
こうした点については雑食動物とも異なります。「人間は雑食だ」と思っている人も少なくないかもしれませんが、私たち人間には雑食動物にあるような鋭い牙はありません(画像参照)。
私たちの歯がチンパンジーやオランウータンなど果食動物(主に霊長類)と似ているのも、人間が彼らと同じ霊長類であることの証明でしょう。彼らの主食は果物、木の葉、草などです。
私たちの唾液は、デンプンの消化に必要な酵素のアミラーゼを含むアルカリ性で、動物タンパクを容易に分解するための酸性の唾液は分泌されません。
また、肉食動物の胃は肉の塊や羽、骨、腱などを容易に溶かしてしまうことができるように、胃に食べ物が入っているときの水素イオン指数は「pH1」で、きわめて強烈な酸性になっています。一方、私たちの胃の場合は「pH4~5」にすぎません。しかも肉食動物の胃は、私たち人間の10~12倍に当たる量の胃酸を分泌しています。
私たちの腸はすべての栄養が摘出されるまで食べたものがとどまっているように胴体の12倍ほど長く、構造は繊毛があって複雑ですが、肉食動物の腸の構造は単純で、肉がもたらす有害な老廃物を早急に体外に排泄させてしまえるよう短くなっていて、胴体の3倍ほどしかありません。
肉食動物の肝臓は人間の肝臓より大きく、動物タンパクの代謝副産物、尿酸を分解して無害な物質アラントインに分解する酵素のウリカーゼを分泌しますが、私たち人間にはこの酵素はありません。
そのため私たちは尿酸値が高くならないよう細心の注意が必要になります。尿酸値が高くなると、痛風や腎結石、尿路結石などのリスクが高くなることは周知のとおりです。
9万人余りを対象に8年間追跡調査をしたスタンフォード大学の研究(※)は、尿酸値が7mg/dL以上だと8年後の全死因のリスクが16%、冠動脈疾患による死亡リスクがほぼ40%、脳卒中による死亡リスクが35%高くなることを明らかにしています。さらに、7mg/dLから1ポイント上がるごとに全死因のリスクが8~13%上昇するといいます(※)。
そればかりではありません。尿酸値の上昇は脳機能をも低下させてしまうのです。
尿酸値が上昇すると、アルツハイマー病リスクが55%、認知症リスクが80%、血管性認知症のリスクが166%増加するといいます。これらはすべて、私たちの健康を瞬間的に脅かすもので、長期的には健康寿命を脅かします。
なお、尿酸値の標準が7mg/dL以下であれば安全というものではありません。実は5.5mg/dLを超えると、メタボ(腹部肥満、高血圧、高血糖、高コレステロール、高中性脂肪など)や退行性疾患(心臓血管疾患、糖尿病、腎疾患、アルツハイマー病など)のリスクが高まることを最近の研究が明らかにしているのです(※)。つまり尿酸値の上昇は、近い将来のメタボや退行性疾患発症の予測因子なのです。
(※)“Drop Acid: The Surprising New Science of Uric Acid―The Key to Losing
Weight, Controlling Blood Sugar, and Achieving Extraordinary Health,” (David Perlmutter, Published Feb 15,2022)
繰り返しますが、私たち人間の体には尿酸を分解する酵素がありません。ですから私たちは、尿酸値を上昇させるような食生活(動物性食品の摂取)ではなく、尿酸値を低下させる食生活をするようにつくられているのです。
すなわちそれは、ビタミンC、ビタミンE、セレニウムなどの抗酸化栄養や、ケルセチン、ルテオリンなどのファイトケミカルが豊富な果物や野菜を中心に、豆類、ナッツやシード類などの「プラントベースの食べ物」で構成された食生活だ、と『Drop Acid(尿酸値を減らせ)』の著者、パールマター博士は言います。
肉食動物はきわめて高いコレステロール処理能力を持っていますが、反して人間の場合、体に必要なコレステロールを体内で合成し食べ物からとる必要がないため、乏しい能力しかありません。
私たちはまた、生きている動物を素手で殺し、血が滴り落ちる生肉にかぶりついて貪るように食べるような能力や感性も備えてはいないのです。
動物性食品の摂取は、体のIGF-1(インスリン様成長因子1)の産生を加速させ、ガン細胞の形成・成長を促進します。
そして、腸内に「グラム陰性菌」などの好ましくない細菌(悪玉菌)を優勢にします。動物性タンパク質のカルニチンやコリンは、この細菌によって有害な物質「TMA(トリメチルアミン)」に分解され、さらに肝臓の酵素によって「TMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)」のような炎症性の物質に変換されます。
TMAOは、心臓血管疾患をはじめ、ガンの発生・転移、糖尿病、腎疾患などのリスクや致死率などを高めることが明らかにされています。ここ20年余りにわたる数多くの科学的研究は、動物性食品の食習慣を続けていくと、やがて体にさまざまな弊害が出てくることを結論づけているのです。
このように、私たち人間の体は、肉を食べるようにつくられているのではなく、生来、果物や野菜を食べるようにつくられているのです。
とはいえ、果物や野菜だけでは、人間の活動を支えるのに十分なカロリーをまかなうには一日の大半を食事に費やさねばならず、凝縮カロリーを豆類や未精製・未加工の全粒穀物から摂取できるよう、人間の体は豆類・穀物を消化吸収できる機能も備えています。
豆類や穀物に含まれるデンプンを分解するための酵素のアミラーゼを分泌するのはそのためですし、胃の上部でも、唾液アミラーゼにまぶされたデンプンの消化が妨げられないよう、pHが5~6に保たれているといいます。
このようなさまざまな事象を考慮したとき、私たち人類の体にとって最もふさわしい食べ物とは「プラントベースでホールフードの食事」である、というのが「ナチュラル・ハイジーン」の教えです。
なお、拙訳書『フィット・フォー・ライフ』(グスコー出版)には、果物や野菜がいかに私たちの体にとってふさわしい食べ物であるかが詳しく記されています。
(文責:松田麻美子)