キャンベル博士からのメッセージ(Part2)

  

このメッセージは「PlantpureCommunities」というグループのウェブサイトに掲載されたものです。

同グループの許可をいただき、日本語に翻訳してみなさまにご紹介することにいたしました。この組織は、「プラントベースでホールフードの食事」を通して、より強靭で健康な、そしてさらにサステイナプルなコミュニティを築くことをめざしています。(文責:松田麻美子)

(以下、キャンベル博士からのメッセージです)

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栄養による回復への道:
COVID-19(新型コロナウイルス)ー最も重要な防衛策とは(パート2)

解説:T.コリンキャンベル博士
2020年4月27日

これは、COVID-19(新型コロナウイルス)について考える「比較的知られていない方法」に関する私の以前の解説のフォローアップです。この先を読む前に、以前の解説をまだ読んでいない方は読んでいただくと、そしてまた、すでに読んでいる方も、もう一度読み返していただくと役立つでしょう。一方、安全第一で対処することや、疾病管理予防センター(CDC)のソーシャルディスタンスをとること、およびそのほかの推奨事項に従うことも、忘れないでください。

まずここで、私が一度ならず耳にしたことがある質問を、みなさんにもしたいと思います。自然はこの危機を通して、「私たちは自然が定める基本から逸れすぎてしまっているかもしれない」ということを、もう一度私たちに思い出させているのではないでしょうか。

さて、このコメントでの論点は次のことです。

以前のコメントでまとめたように、さまざまな慢性変性疾患を広範囲にわたって予防し、時には逆転させることが知られている「低タンパクのプラントベースでホールフードの食事」は、ウイルス性疾患を最小限に抑えるためにも同様の方法で作用するのだろうか?

我々は研究室で、動物タンパクがB型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる肝臓ガンを促進し、発ガン物質によって引き起こされる肝臓ガンと同様の顕著な反応を示すことを明らかにしています。

中国[1]と台湾[2]で行なった人を対象としたフォローアップ研究では、プラントベースの食べ物の摂取は不活発なB型肝炎ウイルス(抗体)と関連していました(いくつかの要因から推定される)。

一方、動物ベースの食べ物は、活発なウイルス(HBV抗原)と関連していました(比較的少量ではあるものの)。簡単に言えば、プラントベースの食べ物は、B型肝炎ウイルスに対する免疫力強化(favors development of immunity)をサポートするということです[3]

研究では特にB型肝炎ウイルスについて見ていますが、特定の疾患のエンドポイントを対象とする薬剤とは異なり、さまざまな慢性の変性疾患にメリットをもたらす栄養もまた、さまざまなウイルス性疾患に影響を与えると予測されるべきであることを裏付ける、十分な証拠があります。

この重要な点についてもう少し詳しく説明するために、最近私の友人の医師と交わしたやり取りをご紹介します。私への彼のコメントは、ほかの人が言いそうなこととも似ているので、彼の批判についてここで触れる時間を少しとることは役立つのではないかと思います。彼のコメントには次のように記されていました。

「しかし、B型肝炎ウイルスはCOVID-19とはまったく異なる「ウイルス・エンティティ(実在物)」です。あるウイルスで有効であったものが別のウイルスでも有効であると想定することは、容認できない科学的な推測です。

それと同様に、タミフルやほかの従来の抗ウイルス薬は、コロナウイルスに対して使用できません。タミフルのような薬は、インフルエンザウイルスに作用するように設計されているからです。(インフルエンザウイルスは、コロナウイルスとは異なる表面酵素を持つ、別のウイルス・エンティティなのです)。

B型肝炎ウイルスに対して有効なものが、コロナウイルスに対しても役立つと言えるどんな証拠があるのでしょうか?」

私の回答は、次のような重要な事実に基づくものです:

タミフル(またはほかの薬)は栄養のようには作用しません。ファイトケミカルやほかの栄養素が豊富な「プラントベースでホールフードの食事」は、さまざまな作用が同時に起こる複雑な代謝経路を通して、体が最適な状態を達成できるようにすることで、全体的な反応を生み出し、最終的には体の機能のすべての側面に影響を与えます[4]

これが、プラントベースの食事が幅広い慢性疾患に対処する理由です。これに対してタミフルは、せいぜいインフルエンザウイルスの狭い部分に対処するように設計された標的療法です。 

タミフルの視点から見ると、ウイルス間の違いが重要になります。なぜなら、タミフルは特定のウイルスのエンドポイントに焦点を当てた技術的な解決策だからです。

それとは対照的に、無数の機能を最適化できるように体に適切な栄養を与えると、体の免疫システムは、適切な栄養に対する適応性がきわめて高いです[5]。機能の最適化には、体の免疫システムも含まれています(※)[6]

(※) 筆者は、体がこれまで未知だった新しいウイルス(抗原)の侵入に直面した際、適切な栄養が与えられていると、免疫システムはその抗原に対する適切な抗体を作る方法を見出すことを示唆しています⟨訳者注⟩。

数多くの研究からの調査結果に加えて、中国と我々の共同研究調査や研究室での研究が示しているように、さまざまな慢性疾患は、同じような種類の栄養でコントロールされていると、その栄養が標準的なアメリカの食事からのものであれ、「プラントベースでホールフードの食事からのものであれ、同様の影響を受けます。

標的薬を使用するロジックと比較すると、栄養によるアプローチは非常に異なるタイプの因果関係です。

別の見方をしてみましょう。食事によって影響を受けるさまざまな慢性疾患の中で、私たちはこれらの疾患の1つを標的薬物によって治療できることがわかったとします。

この薬は意図的にほかの病気に効くように設計されていなかったわけですから、標的薬を使用するロジックは、栄養によるアプローチを却下するには十分な根拠にはなりません。栄養によるアプローチには、標的薬とは対照的に、「さまざまな慢性疾患に効く」という特性があります。

実は、「プラントベースでホールフードの食事」からの栄養は、その定義からもまた、実証からも、さまざまな慢性疾患に総合的に作用するのです。

私の友人の批評は、「タミフルなどの薬剤と食事がもたらす全体的な効果[7]の間には、生物学的同等性がある」という仮定に基づいています。それから、食事がもたらす全体的な効果は、実際には体を通して表され、最適な健康状態を達成するように働くことも忘れないでください。

ですから、私の友人は、人間が作成した単一の技術であるタミフルを、理想的な状態(適切な栄養状態)で健康を生み出し、維持するために、体に生まれながらに備わっている能力とを実際に同等視しているのです。

前述したように、30年ほど前の中国での食事とライフスタイルに関する研究[8]には、B型肝炎ウイルスの研究が含まれていますが、この研究を通して我々が学んだことは、肝臓ガンを引き起こすB型肝炎ウイルスは、栄養によって強力にコントロールされるということでした。この研究は、栄養とウイルスのより大きなつながりを示唆するものです。

生じる結果はウイルスによって異なりますが、特にウイルスがホストに感染する方法といった、ウイルスに共通する機能は見失うべきではありません。

独自の遺伝的要素(DNA、RNA)を持つウイルスは、私たちの体の健康な細胞に侵入し、さまざまな方法で私たちの体の細胞の複製機能を利用してウイルス自身を複製します。

それに応じて、私たちの非常に適応性の高い免疫システムは、ナチュラルキラー細胞を増産し、反応性酸素分子を増やし、これらの反応性酸素分子の供給源である酵素システムの活性を高めることで、侵入するウイルスに対して反撃します。これらの機能に関しては、栄養の効果を説明するために、我々は研究室で調査しました。

そして最後に、私は以前のコメントを再度強調したいと思います。「プラントベースでホールフードの食事」(PBWF)の栄養が与えてくれる恩恵は、数日以内にすぐに現れる可能性が高いです。例えばコレステロール値、体重、および血圧の低下などです。これは、現在COVID-19に感染しやすい人で、まだ感染していない人にとっては特に重要なことです。

この栄養とウイルス性疾患との関係は、栄養効果のもう一つの側面にすぎません。PBWFの食事を介して栄養が正しく摂取されると、COVID-19パンデミックと戦うための重要な、そしてこれまでに認められていない手段を提供してくれる可能性があるのです。

これで、動物ベースの食品と精製加工食品からなる食事(PBWFの食事とは正反対)は、栄養学に関する長年の深刻な誤解を反映していることがおわかりになったと思います[9]

この誤解の結果、私たちは社会経済的に、倫理的に、道徳的に、そして歴史的に非難に値する、とんでもない結果を生み出してしまいました。
私は多くの例を考えることができますが、みなさんにもぜひ、これらの一見無関係な例が、私たちが食べるものにどのように関連するか、よく考えていただきたいのです。

たとえば、
●なぜ医学部は栄養を教えることができないのでしょうか?
●プライマリケア医(※)やその同僚に栄養に関する助言指導料を払い戻す仕組みがないのはなぜでしょうか?
(※)病気にかかったとき、最初に診てもらう身近な医師(家庭医またはかかりつけ医)
●27の米国国立衛生研究所(NIH)の中に、栄養学に特化した研究所が1つもないのはなぜでしょうか?
●現在69,643人と推定される[10]COVID-19 による死者についてはとても心配し、心配するのは当然のことだというときに、なぜ我々は、毎月およそ15万人もの予防可能の死亡(医療過誤、医療用医薬品、および不適切な栄養摂取に起因する慢性疾患などによる)[11]を無視しているのでしょうか?
●アメリカの平均寿命は44位なのに[12]、世界のどの経済発展国よりも一人当たりの医薬品への支出が多いのはなぜなのでしょうか?
●畜産物の摂取(食べること)が地球温暖化の第1の原因であるのはなぜなのでしょうか?[13]
●すべての市民に十分な保険がかけられていないのに、なぜ私たちの医療システムは非常に高価なのでしょうか?
●このようなシステムに恩を受けている政治家を受け入れることができるのはなぜなのでしょうか?

たくさんの同様の疑問を容易に考えることができますが、それらのすべてが、私たちの栄養に関する理解の欠如から生じているのです。

メディア界には私の本『チャイナ・スタディー』を読んだあと、これらの概念を理解しているキャスターたちがいることを私はよく知っています。何人かの人は私と話をしたことさえあります。それにもかかわらず、彼らが「栄養」という言葉に言及するのを私は一度も聞いたことがありません。どうしてなのでしょう?

非常に多くの人がCOVID-19のために苦しんでいる危機の今、さらに苦しむことを避けるためには経済を再開しなければならないというときに、「栄養の真実」(栄養が体に与えてくれるめざましい病気の予防・改善効果)を人々に伝えることができないとしたら、いつそうする勇気があるというのでしょうか?

この「真実」の抑圧に何兆ドルも費やされてきました。企業の利益や政治家の力よりも、人の命のほうが価値があると私たちが決めるのはいつのことでしょうか。

経済を再開できるように、
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キャンベル博士

著者について
T・コリン・キャンベル博士は、ニューヨーク・タイムズのベストセラー『チャイナ・スタディー』の共著者であり、栄養科学の分野で60年以上の経験を持つ生物学/栄養学研究者です。博士はまた、コーネル大学の栄養生化学部の名誉教授であるジェイコブグルード・シュウマンであり、T・コリン・キャンベル栄養研究センター、およびeCornell(コーネル大学のオンライン学習プログラム)と提携している、オンラインの「プラントベース栄養学受講証明書付きコース」の創設者です。

References

【1】 Campbell,T.C.,Chen,J.,Liu,C.,Li,J.& Parpia,B.Non-association of aflatoxin with primary liver cancer in a cross-sectional ecologic survey in the People’s Republic of China. Cancer Res.50,6882-6893 (1990).

【2】 Chen,J.,Campbell,T.C.,Li,B.& Peto,R.Diet,life-style and mortality in mainland China and Taiwan.A study of the characteristics of 85 Chinese counties.(Harvard University,1998).

【3】 Chen,J.,Campbell,T.C.,Li,B.& Peto,R.Diet,life-style and mortality in mainland China and Taiwan. A study of the characteristics of 85 Chinese counties.(Harvard University,1998).

【4】 Campbell,T.Colin, and Howard Jacobson. Whole:Rethinking the Science of Nutrition. BenBella Books. 2014.

【5】 Campbell,T.C.& Campbell,T.M.I.The China Study,startling implications for diet, weight loss and long-term health.pp.184-187,2006.

【6】 I refer to that condition when the host experiences a new viral infection that has never been seen before (many, most?), whereby the immune system finds a way to custom make the appropriate antibody that may in some circumstances also show a shared reactivity with closely related viruses.

【7】 The spelling of‘holism’with the‘w’is meant to distinguish the word from“holism.”A‘wholistic’approach involves seeing the whole as greater than the sum of its parts.(Campbell,T.Colin,and Howard Jacobson.Whole:Rethinking the Science of Nutrition.BenBella Books,p.47-48,2014.)

【8】 Campbell,T.C.,Chen,J.,Liu,C.,Li,J.& Parpia,B.Non-association of aflatoxin with primary liver cancer in a cross-sectional ecologic survey in the People’s Republic of China.Cancer Res.50,6882-6893(1990).

【9】 Campbell,T.C.Nutrition renaissance and public health policy.J.Nutr.Biology 3(1),124-138(2017).J Nutr Biol.2017;3(1):124-138.doi:10.1080/01635581.2017.1339094(2017).

【10】 https://covid19.gleamproject.org/(As of April 27,2020 there were 69,643 deaths estimated from COVID-19.)

【11】 Campbell,TC.The China Study: The Most Comprehensive Study of Nutrition Ever Conducted and the Startling Implications for Diet,Weight Loss and Long-Term Health.2016.Print.

【12】 OECD(2020),Life expectancy at birth(indicator).doi: 10.1787/27e0fc9d-en(Accessed on 23 April 2020)

【13】 https://awellfedworld.org/wp-content/uploads/Livestock-Climate-Change-Anhang-Goodland.pdf

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