Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston Sept 2021
日本のみなさん、こんにちは。
最近子宮筋腫や子宮嚢胞、子宮内膜症、卵巣嚢腫などのトラブルを抱えている女性が年々増加しています。子宮筋腫の場合、35歳以上の女性の20~30パーセント、40歳以では40~50パーセントにみられるといいます。治療法は、サイズが小さい場合は筋腫や嚢胞、嚢腫のみの摘出が可能ですが、大きくなると臓器の全摘手術が余儀なくされます。
ホノルル在住のトビン恵奈さん(52歳)の場合もそうでした。恵奈さんは昨年、子宮内に2つの筋腫と15cm大の嚢胞が見つかり、子宮の全摘手術がすすめられました。
しかし恵奈さんは手術ではなく、「ナチュラル・ハイジーン」のヘルスケアのアプローチに挑戦したのです。そして4か月後、恵奈さんの嚢胞は当初の半分以下にまで縮小し、手術は取り下げとなりました。それだけではありません。102Kgあった体重が53.9Kgにスリムダウンし、高かったコレステロール値、中性脂肪値も正常化、さらに前糖尿病(糖尿病予備群)も克服したのです。
恵奈さんの例を詳しくご紹介したいと思います。恵奈さんは昨年7月末、生理のときに腹部に突然の激痛が襲い、救急車で病院に搬送されました。小学校5年生で初潮を迎えて以来、毎月生理痛に悩まされ、鎮痛剤を使用していましたが、そのときの痛みは比較にならないほど激しいものだったといいます。
搬送先の病院で痛みの原因は子宮筋腫であると診断されました。痛みが治まるまでモルヒネが投与され、専門医による精密検査を受けるよう指示されて帰されました。ホノルルのトリプラー陸軍医療センターの産婦人科でさまざまな精密検査を受け、10月末、2つの子宮筋腫と15cm大の嚢胞があると診断され、子宮全摘をすすめられました。そうすれば子宮ガンの心配もしなくてよいからです。
しかし11年前にグレープフルーツ大の卵巣嚢腫のために卵巣の1つを摘出し、2年前にはステージⅠの乳ガン摘出手術を受けていたということもあった恵奈さんは、子宮を全摘出することに不安と疑問がありました。『女性のためのナチュラル・ハイジーン』(グスコー出版)を読んでいたため、「自分の子宮のトラブルはナチュラル・ハイジーンのアプローチで改善可能では?」という一縷の望みが心の隅にあったからでした。
そんな折、偶然にも私は恵奈さんと知り合うご縁があり、子宮に筋腫と嚢胞があり、翌週手術が予定されている、というお話を伺いました。そこで私は、筋腫や嚢胞は動物性食品や油・砂糖ほかの精製加工食品をとらない限り急激に大きくなることはないので、まず担当医に手術を延期していただき、ウォーターオンリー・ファスティングを試してみる価値があることをお伝えしたのです。
腫瘍や嚢胞は、手術に頼らなくてもウォーターオンリー・ファスティングで小さくしていくことが可能だからです。そしてオアフ島から35分のフライトで行けるハワイ島にある、「Hawaii Naturopathic Retreat」(ハワイ自然療法リトリート)(注)のファスティング専門医の監督のもとで、少なくとも1~2週間のウォーターオンリー・ファスティングをすることをおすすめしました。
(注)https://www.hawaiinaturopathicretreat.com/procedures/fasting/
恵奈さんはしばらく様子を見たいと担当医に伝えて手術を3か月延期していただき、ハワイ自然療法リトリートに予約を入れたのですが、3週間のステイが必要だと言われ、断念せざるを得ませんでした。高校に通う娘さんを毎日車で送り迎えしなければならないからでした。
そこで私がおすすめしたのは、数日間徹底した「プラントベースでホールフードの食事」をしたあと、週末にウォーターオンリー・ファスティングをし、平日は「ジュースダイエット」(注)をするという方法で、「ショートファスト」と「ベジタブルジュースダイエット」を繰り返しながら、デトックスしていくことでした。ウォーターオンリー・ファスティングの場合よりも時間はかかりますが、子宮に形成された腫瘍や嚢胞は少しずつ少しずつ溶解し、小さくなっていきます。
(注)『女性のためのナチュラル・ハイジーン』(グスコー出版)のレシピ欄(279ぺージ)に掲載の「ベジタブルジュース類」を参照し、低速回転のジューサーで絞る自家製の野菜ジュースを1日2リットル程度、4~5回に分けて飲みます。
このプロセスは「オートファジー」(自食作用)と呼ばれるサバイバルのメカニズムで、食べ物が手に入らないときに作動する生命維持のための機能です。
食事をとらないとそれから48時間は、肝臓や筋肉に蓄えられていたグリコーゲンをエネルギー源として使いますが、グリコーゲンは48時間ほどで完全に枯渇します。そこで体は「オートファジー」を起動させ、使い古した細胞や役立っていない組織を壊し、生命維持のために使えるものは使い、使えないものは処分するプロセスを開始します。
このメカニズムとプロセスを科学的に解明した大隅良典博士(東京工業大学名誉教授)が2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞していますが、「ナチュラル・ハイジーン」のパイオニアの医師たちは、1830年代からこの方法を治療にとり入れてきているのです。
筋腫や嚢胞は体にとって役立っていないのですが、その中にはまだ栄養として利用できる成分もありますから、食べ物からの栄養補給が途絶えるファスティング中、体は生命機能を維持するために腫瘍や嚢胞を壊し、利用できるものは利用し、利用できないものは処分されます。こうして腫瘍や嚢胞は小さくなっていくのです。
オートファジーの機能が作動し始めるのは食事をやめて16時間後からという見解もありますが、活発になるのは48時間以降です。ですから、48時間以上のファストをしばらく続けることが、筋腫や嚢胞を速やかに小さくする秘訣です。食事をとらない時間が長くなればなるほど、オートファジーの機能は活発になります。
しかし長期にわたるウォーターオンリー・ファスティングを自宅で独自にすることはすすめられませんので、私が恵奈さんにおすすめしたのは、週末に最低2日半(60時間)のウォーターオンリー・ファスティングをし、平日は自家製の「野菜ジュースダイエット」をすることでした。
ところが恵奈さんはなんと木曜日の夕食後から月曜日のお昼までの3&2/3日のウォーターオンリー・ファスティング、そして月曜日のお昼から木曜日の夜までは「ジュースダイエット」というプログラムを1月8日から始めたのです。2日ほどは、体がフワーっと宙に浮いているような感じと、頭痛、喉の渇きなどの症状があったようですが、すぐに落ち着き、ファスティングにも慣れてきたそうです。
それからは体内のクレンジングや組織の修復が活発に行なわれていく様子を目の当たりにすることになりました。化学臭のあるコールタール状の宿便が下痢のような状態で何日も続き、膣からはお肉の小片のような固まりのおりものが排泄していきました。自分の体の中がどんどんクレンジングされていく、そして筋腫や嚢胞がだんだん小さくなっていくのが感じられるようだったと言います。
終末ファスティング開始から4週間後の検診では、嚢胞が当初より5センチ縮小していることをMRI画像が示しており、ガン性の増殖は見られませんでした。週末ファスティング開始から2か月を経過した時点で平日の「ジュースダイエット」は朝食だけにし、昼食と夕食はグリーンスムージーに変えました。
終末ファスティングから15週目に受けた検診では、「前回までは触診で位置がはっきりと確認できた嚢胞が全く確認できなくなっている」と担当医が驚いたといいます。昨年10月の時点では「子宮全摘手術は不可避」という見解でしたが、今は手術をするか否かは恵奈さん次第であり、手術をする場合でも開腹手術ではなく、内視鏡を用いて嚢胞を削除するので傷跡も最小限に抑えられると言われました。
この時点から固形食を開始し、週末のウォーターオンリー・ファスティングを中止。朝は野菜ジュースや果物、お昼はフラックスシード入りのグリーンスムージー、そして夜は、サラダ、温野菜、発芽させた豆類やキヌア、昆布と一緒に炊いた黒インゲンマメ、レンズ豆、小豆、うずら豆、白インゲン豆などをとるようになりました。豆類はサラダのトッピングにするほか、野菜と一緒にスープにしたり、ディップやペーストにしたりします。きわめて低塩で油と砂糖は使いません。
そして終末ファスティング開始から4か月余りあとに受けたMRI検査の画像は、嚢胞が当初のサイズから半分以下になっており、前回の検査から3cm小さくなっていることを示していたのです。手術は取り下げとなりました。担当医は「正直言って手術は絶対避けられないと思っていたのに完全に覆された」と言い、恵奈さんの目を見張るような変身ぶりに、驚きが隠せない様子だったそうです。
子供の時以来経験したことがなかった、はじけるようなエネルギーの炸裂を実感している恵奈さんにとって、この食事プログラムは毎日の定番となり、嚢胞を完全消滅させるために折にふれて週末ウォーターオンリー・ファスティングを続けていくことにしています。
子宮や卵巣にトラブルのある女性のみなさんに共通して言えることは、「そのトラブルの根本原因は、子供の頃からの食生活にある」ということです。恵奈さんの子供時代からの食生活についてお話を伺ってみると、私と全く同じでした。
ご飯やお味噌汁のような日本食は食べるものの、お肉や大トロ、揚げ物、炒め物などの高脂肪食品、ドーナツやケーキなどの甘いものが大好きで、小学校5年生で初潮を迎えて以来、毎月生理痛に悩まされ、鎮痛剤が手放せなかったといいます。そして日本で結婚したお相手がアメリカ人だったことから食事はますます欧米風になり、2003年にご主人の転勤でホノルルへ移住してからは、チーズや乳製品の摂取量も増えました。
脂肪過剰の欧米風の食事は性ホルモンのレベルを上昇させ、乳ガン、子宮筋腫、子宮嚢胞、子宮ガン、卵巣嚢腫、卵巣ガンなどのリスクを高めてしまいます。さらにオメガ6脂肪酸が過剰でオメガ3脂肪酸が極端に少ないため、炎症性タイプのホルモンで痛みを引き起こす「プロスタグランジンPGE2」の製造を助長させ、生理で子宮が収縮するときに激しい痛みを経験することになります。
『女性のための超健康革命』には、これらのことが詳しく解説されていますので、女性のみなさんにはぜひご一読をおすすめします。
(文責:松田麻美子)