Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston May2021
日本のみなさん、こんにちは。
先日衛星放送で送られてくるNHKテレビの「おはよう日本」を見ていましたら、天気予報を伝える気象予報士の若い女性が、「4月の紫外線は9月のものと同様、かなり強くなっていますので、外に出るときは、帽子やサングラス、手袋、日傘、そして日焼け止めなどで、紫外線対策をしっかりなさってください」と、これらのグッズを手にコメントしていました。
これを見ていた私は、「何と無責任なことか!」と怒りを隠せませんでした。ニュース番組中でのこうした無責任なコメントのために、多くの人が日光を避け、その結果、新型コロナウイルス感染のリスクを高めてしまうからです。
日光を避けるとビタミンDを合成できず、ビタミンD不足に陥ってしまいます。ビタミンDが不十分だと免疫機能が正しく働かず、コロナ感染を防ぐことができません。
実は、日本人の8割はビタミンD不足なのです。国内の大規模コホート研究「ROAD Study」では、対象者1683人(男性595人、女性1088人)の血中ビタミンDの指標「25(OH)D」の数値が30ng/ml未満であるビタミンD不足者が81.3%に達していたといいます(注1)。また別の情報によると、欠乏症も4割にのぼっています(注2)。
(注1)「Osteoporos Int.」(2013;24(11):2775-87.)
(注2)http://www.jikei.ac.jp/hospital/kashiwa/sinryo/40_02w7.html#:~:text
ビタミンDは、日光に当たったときに、皮膚表面下にあるコレステロールによって生成される、ビタミンというよりもむしろホルモンの一種です。これは脂肪細胞や肝臓で、25(OH)D(25ドロキシビタミンD/貯蔵型ビタミンD)に変換され、腎臓で活性化されて骨・腎臓・腸などに運ばれます。
日光は骨の健康にとって不可欠であることはたいていの人が知っていますが、意外と知られていないのが、日光は健康な免疫機能にとって最も重要な要素の一つであることです。そしてこのことを知らないばかりに、今日非常に多くの人が、新型コロナウイルスの感染やその重症化という深刻な事態を招くことになります。
ビタミンDは「免疫細胞」(一般的には「白血球」として知られている)と特有なつながりを持っており、免疫反応のバランスを保つのに重要な役割を果たしています。
具体的に言うと、ビタミンDは免疫細胞のT細胞、B細胞、抗原提示細胞(マクロファージや樹状細胞など)を直接活性化します。これらの免疫細胞にはビタミンD受容体が備わっているのです。さらにこれらの細胞は、腎臓同様、貯蔵型のビタミンDを活性型ビタミンDに転換する機能も備えています。
ビタミンDと免疫細胞の関係についてさらに詳しく見てみると、ビタミンDは「防衛タンパク」(抗菌ペプチド)を著しく増加させ、感染症を抑制するのに貢献しているのです。
「防衛タンパク」とは、自然免疫系の一部で、ウイルス感染への防御を助けるタンパク質です。口・鼻・気道・気管支・肺などの呼吸器系が外部環境と接触するバリアー部位で、皮膚細胞や好中球(免疫細胞の一種)によってつくられます。
なかでもこの防衛タンパクを代表する「カテリシジン」には、きわめて強力な「抗ウイルス活性」があります。ウイルスが私たちの皮膚や呼吸器系の細胞に付着するのをブロックし、細胞を強化してウイルスの細胞内への貫通を阻止するのです。
ウイルスは自ら複製することはできないため、細胞の外膜に付着して細胞膜を貫通し、細胞にウイルスが持つ遺伝子を注入して細胞の複製機能をハイジャックしなければ、複製できません。つまりカテリシジンは、ウイルスが細胞内に入り込み、細胞の増殖機能をハイジャックするのをブロックしてしまうのです。
肺ではウイルスが肺の細胞に影響を与える前に、この防衛タンパクがウイルスに直接付着して、ウイルスの膜(この中にウイルスが封じ込められている)を攻撃し、破壊してしまいます。こうして肺のウイルス感染を劇的に減少させるのに貢献しているのです。
このようにビタミンDは、肺炎・呼吸困難・人工呼吸器や緊急入院などの必要性や死亡率を減らすのにも不可欠なのです。
最近スペインの病院で行なわれた新型コロナウイルス感染患者76人を対象にした研究によると、感染者中ビタミンDのサプリメントを与えられたグループでは、症状が悪化してICU(集中治療室)に転送されたケースがわずか2%にすぎませんでしたが、ビタミンDのサプリメントを与えられなかったグループでは、50%もの患者がICUに転送され、15%は死亡したといいます(注3)。
(注3) 「The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology」(2020 Oct; 203:)
ですから、ビタミンDが新型コロナウイルスのような急性ウイルス性呼吸器感染症を減少させることは、特筆する価値があります。
ビタミンDはまた、腸内細菌叢のバランス崩壊(善玉菌が減少し、悪玉菌が優勢になる) を防ぐことで、腸内環境を改善し、ウイルス感染の予防に貢献しています。
腸内細菌叢のバランスを保つことは、腸壁への炎症、それによって発生するリーキーガット(腸壁の緻密性が失われること)を阻止するために非常に重要なことです。リーキガットが生じると、ウイルスやバクテリなどの有害菌や未消化の物質が血液循環に入り込み、全身へと運ばれることになります。そして全身の組織の各所で炎症リスクを高めていきます。炎症リスクが高まるということは、新型コロナウイルス感染症のような呼吸器系の炎症リスクも高まるということです。
「免疫組織の70%は腸にある」と言われていますが、それは、腸壁にある「バイエル版」に、マクロファージ、樹状細胞、T細胞、B細胞などの免疫細胞の70%が集結していて、外部からとり込まれた異物(ウイルスやバクテリアなど)が血流に入り込まないよう見張っていて処理するからです。
こうした免疫細胞にある一連の抗ウイルス効果は、①「ビタミンD」、②腸内細菌叢を養う「食物繊維」、そして③腸内細菌が食物繊維を分解(発酵)することによって産生される「短鎖脂肪酸(ブチレートなど)」による腸粘膜の健全性維持と炎症の減少などの相乗的な作用によるものです。
このようにビタミンDと免疫細胞との関係を見ると、日光に当たり、健康なビタミンDレベルを保つことは、新型コロナウイルス対策にとって非常に重要であることがわかります。ですから、新型コロナウイルス感染症対策として、日光に当たり、血中の25(OH)Dレベルを30ng/ml以上に保つことに心がける必要があるのです。
日光浴の目安は、週に4~5回、夏は午前10時前か午後3時過ぎに10~15分ほど、ただし少しずつ皮膚を日光に慣れるようにさせるため、5分程度から始めて、1週間ほどかけて15分程度になるようにします。冬は日中15~30分ほど、手や顔に当たるようにします。なお、戸外に出られない人や日光浴ができない場合は、サプリメントのビタミンD3を1日1000~2000IUとることをおすすめします。
なお、免疫機能を強化し、新型コロナウイルス感染症のような感染症を防ぐには、日光ばかりか、体にとってふさわしい食生活や十分な睡眠、運動、ストレスマネージメント、新鮮な空気、純粋な水など、「ナチュラル・ハイジーン」が教える「健康の7大要素」も不可欠です。
『50代からの超健康革命』にはその理由が詳しく記されていますので、コロナ禍にある今、ぜひご一読をおすすめします。
(文責:松田麻美子)