2021年12月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston Dec. 2021

日本のみなさん、こんにちは。

子どもが育ち、「キャリアウーマンとしてこれから仕事に集中できる!」というときに、更年期障害で人生を無駄にしている女性が少なくありません。

今日、日本女性の37%はなんらかの更年期症状を抱えており、そのうち症状がひどく、仕事を辞めた人が9%、辞めないまでも、人事評価の低下や降格など、仕事に何らかのマイナスの影響があった人が15%にものぼるといいます(2021年11月5日のNHKテレビ『おはよう日本』の調査より。

更年期症状には、ホットフラッシュ(ほてり)、寝汗、不定愁訴(疲労感・不安・睡眠障害、イライラ感・ウツ・動悸・息切れ・耳鳴り)、肩こり、関節痛、手指の痺れ、性交痛、ドライアイなどがありますが、最も一般的なのがホットフラッシュ(ほてり)と寝汗です。 

ところが40年余り前(1970年代後半)の日本では、ホットフラッシュや寝汗などの更年期症状を抱えている女性はほとんど稀であったことを、マギル大学(モントリオール)の医療人類学者、マーガレット・ロック教授の研究が明らかにしています(Psychosomatic Medicine, 1998;60:410-419)。

ロック教授はマニトバ州(カナダ)とボストン(アメリカ)在住の45歳から55歳までの閉経期にある女性たち数千人にインタビューし、その結果を日本の長野、京都、神戸在住の1,225人の女性たちと比較しました。

その結果、両者の違いは歴然としていました。日本に7年余り暮らし、この調査を行なったロック教授によると、その当時日本には「ホットフラッシュ」などという言葉さえなかったといいます。

カナダとアメリカで調査した際に使用したアンケートを日本語に翻訳して対象者らに回答を求めても、「ホットフラッシュ」という表現では通じなかったために、「発熱ではなく、体が急に熱くなったことがありますか?」という表現に書き換えても、なかなかその症状を理解してもらえなかったそうです(『Margaret Lock. Film 4. Research with Japanese Women on Menopause』<https://www.youtube.com/watch?v=nA3BwweXiIQ>)。

このような症状を経験していた女性は全体の19%で、この数字はカナダやアメリカの女性たちの場合と比べ著しく少なかったのです。日本女性は内気すぎてホットフラッシュの苦痛を訴えることができないだけなのではないか、と訝ったロック教授は、30人余りの日本人医師たちに、日本の女性たちは北米の女性たちに比べ、ホットフラシュほかの更年期症状を経験する人が本当にこんなに少ないのか確認したそうです。

しかし、日本の医師たちからは、「北米の女性たちはなぜ更年期にそんなもひどい不快な症状を経験するのか」と逆に尋ねられたそうです。

当時の日本女性たちにとって、ホットフラッシュほか、イライラ、気分の落ち込み、睡眠障害などの更年期症状は全く知られていなかったわけではないものの、きわめて稀だったのです。たとえあったとしても一般的に軽く、更年期はとてもスムーズに過ぎていく、とロック博士は述べています。

1970年代後半(昭和50年代前半)当時、日本女性たちの多くにとって、更年期とは生理が止まる以外には何の意味もありませんでした。それは文字どおり「<Meno>+<pause>=月経周期が止まること」以外の何物でもなかったのです。

私の母もこの時代に更年期を迎えていましたが、更年期症状を訴えたことはありませんでした。不快を訴えていたのは肩がこるようになったことくらいです。ロック博士の調査でも、日本女性の主な更年期症状は「肩こり」だったといいます。

アメリカやカナダの女性たちの多くがホットフラッシュほかさまざまな不快な症状を訴えているにもかかわらず、これらの症状が日本女性に著しく少ないのはなぜなのか。その理由について、ロック博士は「最もはっきりしている理由は食生活だ」と指摘しています。

当時、更年期を迎えた人たちが20代~50代を過ごした頃(昭和20年代半ば~50年代半ば頃)の食事は、欧米のような肉食中心ではなく、ご飯が主食の伝統的な日本食でした。

肉や乳類の摂取量はまだまだ非常に少なく、脂肪摂取量の昭和25年、30年、40年、50年の平均は、今日の半分以下でしかありませんでしたし、生理痛や更年期症状に影響するエストロゲンを乳類からとり込む量も、今日のおよそ3分の1でした(厚生労働省『国民健康・栄養調査結果の概要』/昭和25年、30年、40年、50年、および令和元年のデータより筆者が算出)。

また、昭和20年代半ば~昭和50年代半ば、日本ではまだタンパク源として大豆が重視されており、大豆の煮もの、枝豆、納豆、豆腐、みそ汁などからイソフラボンを豊富に摂取していたことも、当時の日本女性の更年期症状が軽かった理由です。

イソフラボンは、エストロゲン(女性ホルモン)と化学構造が似ていることから、「植物性エストロゲン」とも呼ばれ、体のエストロゲン・レセプター(受容体)に付着し、更年期のエストロゲンレベルの激減を緩和するのに役立ちます。

 

更年期障害は、卵巣の生殖ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンのレベルが低下するときに、そのバランスが維持できないことから生じます。

では「バランスが維持できないのはなぜか」「どのようにしたらバランスがとれるのか」。それについては、拙著『女性のためのナチュラル・ハイジーン』(グスコー出版)でわかりやすく解説していますので、そちらをご覧いただきたいのですが、キーポイントは自分が選択し、行なっている食生活にあります。

つまり更年期障害は、自分自身が作ってしまうものなのです。でも、この本がすすめる「ナチュハイ・ライフ」(ナチュラル・ハイジーンのライフスタイル)に変えることで、更年期の不快な症状はきわめて短期間のうちに消えていきます(早い人では1週間もしないうちに)。

ではどのような食事をすればよいのでしょうか。『女性のための超健康革命』には、「ナチュハイ式」の食事プログラムやレシピが紹介されています。また、『50代からの超健康革命』(グスコー出版)の第8章「「ナチュラル・ハイジーン式」食事プログラムの1週間のメニューとレシピや、『超健康革命「旬のレシピ集」』もオススメです(『超健康革命「旬のレシピ集」』は、下記で扱っています)。

<https://gsco-publishing.jp/wp/wp-content/uploads/2018/07/recipe.pdf>
<http://natshell-34.com/shopdetail/000000000102/ct46/page1/recommend/>

「私の更年期はまだずっと先」という女性のみなさんも、今からこの食事プログラムに従えば、更年期に入っても「ただ生理が止まるだけ」で過ぎていきます。

「更年期」ーそれは、決して憂鬱で不快な期間ではありません。「人生にはまだまだたくさんの楽しみがある」というすばらしい発見をするときです。

もう生理用品は必要ありません。外出や旅行の際の荷物が減ります。また、すばらしいことに、避妊の心配もいらなくなるのです。更年期は、女性が子育てを終え、仕事の面でもキャリアを磨き、これからますます女性の人生を謳歌するときの始まりなのです。

女性の平均寿命は90歳に近づいています(2020年の厚労省のデータでは87.74歳)。閉経後の40年余り、女性のみなさん、人生を大いにエンジョイしてください。『女性のためのナチュラル・ハイジーン』はそれを可能にしてくれる1冊です。

(文責:松田麻美子)