2020年12月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston Dec 2020

日本のみなさん、こんにちは。

みなさんは血液が全身の血管を滞りなく流れるような食生活をしていらっしゃいますか?全身の血管の長さを繋ぎ合わせると、10万キロ、地球2周半にも及びます。この血管の中を血液が滞りなく流れていないと、全身の組織に酸素や栄養を与えることはできません。また老廃物を運び出すこともできません。血管は私たちの体の生命線なのです。

ですから日ごろから、全身の血管を詰まらせないような食生活が不可欠です。ところが現実を見てみると、今日では日本でさえ、平均的な食事をしていると、2歳頃から脂肪の筋が血管に沈着し始め、10代の後半になると、すでに動脈硬化が始まっています。そして中高年になる頃には大半の人の血管には閉塞物が形成され、血流が妨げられているのです。

その顕著な例を示しているのが、日本の成人男性の4人に1人、50~60代では2人に1人がED(インポテンツ)だというデータです(注)。75歳以上ではその割合が80%にものぼります。
(注)https://ed-netclinic.com/about_ed/data.php

もはやEDとは何か知らない男性はいないでしょうが、EDは心臓発作や脳梗塞の最もわかりやすい危険信号であるということを知っている人は少ないかもしれません。
元シカゴ衛生局長官で、現在はクック郡立病院(シカゴ)の医務部長を務める泌尿器科医、テリー・メイソン医学博士は「EDは炭鉱のカナリアのようなものだ」と指摘しています(注)。EDはペニスだけの問題ではなく、心臓や脳を含む全身の血管にまで血流障害が広がっていることを示唆しているからです。
(注)http://thechart.blogs.cnn.com/2011/08/17/erectile-dysfunction-the-leading-indicator-of-heart-disease-in-men/

つまり日本人男性の4人に1人、中高年では2人に1人以上が血流障害を起こしていて、心臓病のリスクを抱えて暮らしていることになるのです。しかし大半の男性は、自分がそのような切迫した状況に置かれているとは想像だにせず暮らしています。

一方、女性の場合は、男性のように「炭鉱のカナリヤ」のようなサインが体に現れることはありません。ですから男性以上に血流障害の改善に努める必要があります。実は女性の心臓病死亡リスクは、男性の場合よりも高いのです(男性は7人に1人、女性は6人に1人)。

心臓病は日本でもガンに次ぐ死因2番目の病気です。ところが大半の人は、ガンを恐れても、心臓病はガンほど深刻に受けて止め、恐れられているようには思われません。例えば大半の女性は何よりも乳ガンを恐れ、心配していますし、男性も近年では、前立腺ガンを何よりも心配しています。しかし、実のところ、女性も男性も、心臓病の死亡率は乳ガンや前立腺ガンの死亡率のそれぞれ7倍と8倍も多いのです。

しかもガンは、定期的な検診でかなり早期に発見できますが、心臓病は、たとえストレステストや心電図で異常が発見されなくても、突然発作を起こす例が非常に多い病気です。心臓病を抱えているとは思ってもいなかった人が、ある日突然心臓発作を起こし、それが「一巻の終り」という例も最近では少なくありません。

では「血流改善を可能にする最も確実な方法とは何か」──それをきわめて科学的なエビデンスをもとに明らかにし、世界的に知られているのが、『The China Study』(邦訳:『チャイナ・スタディー』/グスコー出版より絶賛発売中)と、『Prevent and Reverse Heart Disease』(邦訳:『血管をよみがえらせる食事』/ユサブルより12月3日発売)です。

アメリカではこれらの本のアドバイスに従って心臓病を克服した人の例は枚挙にいとまがありません。ビル・クリントン元大統領もその一人です。10年前、コーネル大学栄養生化学部名誉教授T・コリン・キャンベル博士の『The China Study』と、心臓病治療では世界知を誇るクリーブランドクリニックの「心臓血管疾患予防と回復プログラム」のプログラムディレクターを務めるコールドウェル・エセルスティン博士の『Prevent and Reverse Heart Disease』を読んだクリントン氏は、わずか3か月足らずで、24ポンド(約11キロ)減量し、持病の心臓病を完全に克服したのです。

クリントン氏は大統領職を二期務めたあと、2004年と2010年に心臓発作を起こしています。一度目の発作のときは、閉塞した心臓の血管の4個所にバイパス手術を受け、6年後には、そのバイパスのうちの二本が詰まってしまったために、2度目の心臓発作を起こし、ステント留置術を受けています。

ところがバイパス手術やステント留置術などの措置は一時的な効果しかなく、心臓の血管は再び詰まってしまうことを、クリントン氏はステント治療を受けた直後に知ったのです。それはまさに、自分がいつ爆発するかわからない時限爆弾を抱えて暮らしているようなものです。

最初の心臓発作を起こしたときには、死ぬ思いをしているだけに、「あのような思いはもう決して経験したくない」「一人娘のチェルシーの結婚を間近に控えているだけに、やがて生まれてくる孫と遊ぶ時間をできるだけ長く持ちたい」、そんな切実な思いに駆られていたクリントン氏を救ったのがこの2冊の本、『The China Study』と『Prevent and Reverse Heart Disease』だったのです。

心臓に重篤なトラブルがあった患者たちが、プラントベースの食事で動脈の閉塞物を一掃し、心臓周辺のカルシウムの沈着をなくし、心臓病を完全に克服していることをこの2冊の本で知ったクリントン氏は、ハンバーガーやバーベキュー、ドーナツなどのジャンクフードが大好きな、自称「Junk food eater/ジャンクフード・イーター」から、一夜にしてプラントベースの食習慣に変わったのです。

そしてなんとわずか3か月足らずで、24ポンドもの劇的減量を果たし、「三度(みたび)心臓発作を起こすことはないだろう」と担当医から太鼓判を押されるほどの健康体に変身しています。

2010年9月22日夕方のCNNの報道番組「The Situation Room with Wolf Blitzer 」に出演したクリントン氏が、このことを自ら語ったことが、全米の4大ネット(NBC、CBS、ABC、FOX)のニュース番組でも報じられたため、『The China Study』と『Prevent and Reverse Heart Disease』は、「クリントン氏の劇的減量&心臓病克服の救い主」として、全米に知られることとなりました。日本のメディアはこのニュースは報じていないようですので、今これをご覧のみなさんの大半は初めて知ったことと思います。

『チャイナ・スタディー』は、プラントベースでホールフードの食習慣に変えることは、ガンばかりか、心臓病から糖尿病、自己免疫疾患、さらには年をとると避けられないと思われている骨粗鬆症や加齢性の目の疾患、アルツハイマー病などの認知症までも、予防、そして多くの場合、回復までも可能にすることを、膨大な量の裏付けをもって解説していることを、みなさんの多くはすでにご存じのことと思います。

一方『血管をよみがえらせる食事』は、血管と心臓病や脳卒中にのみに焦点を当てています。実はこの本は『心臓病は食生活で治す』というタイトルで10年前に角川学芸出版から出版された本のリメイク版です。翻訳はいずれも私が担当していますが、このリメイク版では、文体を完全に変えたばかりか、レシピ部分は、日本の読者が利用しやすいよう、レシピ中のすべての食材が日本で入手可能なものでこしらえられるよう、随所に細かい配慮がされています。

収録されている209種のレシピは、完全にノンオイル・低脂肪・きわめて低塩の「プラントベースのホールフード」で構成されていて、通常お砂糖が必要なデザートのレシピでも、「NO SUGAR」をめざすために、お砂糖よりもずっとヘルシーな代用品(デーツなど)が使えるようにしてあります。

「プラントベースの食事」に関心のあるみなさんにとって、いま日本で入手できるベジタリアンやヴィーガンのレシピ集とは比較にならないほどヘルシーで完璧なものだと思います。

また、プラントベース・ホールフードの食事を用意するうえでお役に立つ「健康・栄養に関するアメリカ発の最新情報なども特に本書のために私が追加しています。『チャイナ・スタディー』(グスコー出版)と併せて、この『血管をよみがえらせる食事』(ユサブル)もご利用いただければ幸いです。

(文責:松田麻美子)