2020年10月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston October 2020

 

日本のみなさん、こんにちは。

今回は安倍前総理に辞職を余儀なくさせた「潰瘍性大腸炎」について、お話ししたいと思います。

この病気は、クローン病と同様の炎症性腸疾患のひとつで、大腸の粘膜に炎症が起きることにより、びらん(注)や潰瘍ができる慢性の病気です。激しい腹痛や下痢、血便などの症状を繰り返し、日本国内の患者数は16万6,000人以上と、厚生労働省指定難病の中でも最多とのことです。

(注)皮膚や粘膜の表皮が欠損し、下部組織が露出した状態。ただれ。

医学では原因不明の難病とされ決定的な治療法がないため、投薬しながら生涯にわたりこの病気と付き合っていかなければならない、といわれています。安倍前総理も経験しているように、投薬は長期にわたると効果がなくなります。また、投薬によるガンへのリスクも明らかにされています。

この病気を抱えている人が置かれている状況にはきびしいものがありますが、「ナチュラル・ハイジーン」の見地からすれば、克服が可能です。

現代医療がこの病気を治せないのは、症状をなくしたり緩和させることばかりに焦点を当て、病気を引き起こしている本当の原因をとり除かないことにあります。

潰瘍性大腸炎の根本原因は、長期間にわたる「体にとってふさわしくない食習慣やライフスタイル」にあります。

「体にとってふさわしくない食習慣」とは、肉・乳類・魚・卵などの動物性食品と、白米・白いパンや白い粉製品・砂糖・油などの精製加工食品が中心の食事、および、カフェイン飲料、過度のアルコールや唐辛子のような刺激性の強い食品の摂取などです。

特に乳類は、体にとってふさわしい食べ物とは言えません。牛乳や乳製品を摂取したときに、急性の下痢や大腸炎になる人が少なくないのは自然の摂理なのです。この症状は乳糖不耐症によるものです。

乳糖(ラクトース)は牛乳に含まれる糖ですが、乳糖を分解して「グルコース」と「ガラクトース」に変えるために必要な酵素「ラクターゼ」が不足しているため、日本人の80%余りは乳糖を消化できないといわれています。分解されない乳糖は、体にとって有害な物質となり、腸壁を刺激することになります。

さらに人間は、離乳期を過ぎると胃から酵素「レニン」が分泌されなくなるため、乳類に含まれるミルクタンパク「カゼイン」を消化することができなくなります。

消化できないミルクタンパクは腸壁から吸収され、免疫システムに過剰反応を引き起こし炎症を助長させてしまうことから、花粉症やアトピー、そして腸壁の炎症などのリスクが高くなります。

そして、食生活の改善とともにきわめて重要なのが、睡眠や運動の不足、日光に十分当たらないこと、ストレスマネージメントの欠如による過剰なストレスなど、「体にとってふさわしくないライフスタイル」の改善です。

乳類の摂取に限らず「体にとってふさわしくない食習慣」や「体にとってふさわしくないライフスタイル」を続けていると、神経エネルギーが消耗し、代謝副産物が完全に消化されなくなります。その結果、未消化の物質が体内にため込まれ、体内環境を汚染し、体を「毒血症」(注)にさせてしまいます。ため込まれた老廃物は毒素となって大腸の粘膜を刺激し、腹痛や下痢を引き起こします。

(注)血流が汚染された状態。「ナチュラル・ハイジーン」では、病気に至るまでの状態を7段階に分けて捉えています。「毒血症」は第2段階、「炎症」は第4段階、「潰瘍」は第5段階とみなされ、最終の第7段階になるとガンや腎不全などの重い慢性病に至ります(「病気の7段階」の図、参照)。

こうした状態が長年続くと、腸壁は繰り返される刺激のために炎症を起こします。食習慣やライフスタイルを改善しなければ、やがて潰瘍へと進行していきます。

しかし、私たちの体には想像を絶するすばらしい修復力が備わっています。「体にとってふさわしい食習慣とライフスタイル」を始めると、その修復力が発揮され、この病気を克服することができます。

米国南東部ジョージア州アトランタ郊外にある「ゴールドバーグ・テナー・クリニック」(注)は、45年余りにわたって慢性病を専門に扱っているクリニックですが、潰瘍性大腸炎などの難病患者たちを「ナチュラル・ハイジーン」の見地から見事に回復させていることで知られています。

(注)「Goldberg Tener Clinic」<https://www.goldbergtenerclinic.com/about/>

 

私の親しい友人の中にも潰瘍性大腸炎を「ナチュラル・ハイジーン」のアプローチで克服した人がいます。デーヴ・クライン氏(62歳)です。18歳のとき以来、潰瘍性大腸炎のためにひどい下痢や極度の疲労感に悩まされ続け、治療のため7か所もの専門医を渡り歩き、8年間、薬漬けの生活を送っていたのですが、26歳のときに「ナチュラル・ハイジーン」と出逢い、自分の抱える病気の根本原因は、自らの食習慣やライフスタイルの誤りにあることを学びます。

「体にとってふさわしい食べ物を正しい組み合わせで食べる」という食事のルールや、十分な睡眠と運動、日光浴、ストレスマネージメントなどのライフスタイルをとり入れたクライン氏は、それから1年もしないうちに潰瘍性大腸炎を克服しました。

「ナチュラル・ハイジーン」のすばらしさを知ったクライン氏は、その後、自然療法医とナチュラル・ハイジーンの医師としての博士号を取得、1993年に「大腸炎とクローン病健康回復センター」(注)を設立します。

(注)「Colitis and Crohn’s Health Recovery Center」
<https://colitisandcrohnscenter.com/>

そして今日まで27年間、この病気で悩む人々のガイダンスを電話、メール、スカイプ、ビデオコールなどで行なっています。博士の指導で健康をとり戻した人は、5,000人以上と言われています。

クライン博士が自らの体験を記した著書、『Self Healing Colitis & Crohn’s:The Complete Wholistic Guide to Healing the Gut & Staying Well(大腸炎とクローン病の自然治癒:大腸の修復と健康維持のための完全ホリスティックガイド』)は英文ですが、この病気で悩む人にとってはおすすめです。<https://www.amazon.com/Healing-Colitis-Crohns-David-Klein-ebook/dp/B009AKJB24>

潰瘍性大腸炎は決して不治の病ではなく、克服可能の病気です。この病気で悩んでいる多くのみなさんに、ぜひともこのことを知っていただきたく、今回とりあげた次第です。

なお、「ナチュラル・ハイジーン」の「病気の7段階」については、拙著『50代からの超健康革命』(グスコー出版)で詳しく解説していますので、ご興味のある方は、そちらをご覧ください。<https://gsco-publishing.jp/books/h-50dai/>