2020年6月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston June 2020

日本のみなさん、こんにちは。

世界が新型コロナウイルスと戦っている今、私たちにとって急務とされるのは、ウイルスと共存しながら健康に暮らすための知恵を身につけることでしょう。

19 世紀から 20 世紀の初め、コレラ、赤痢、疫痢、ジフテリア、スペイン風邪(H1N1インフルエンザウイルス)など、さまざまな感染症が多くの人に蔓延した際、ナチュラル・ハイジーンの医師たちが行なった指導から学べることがあると思います。

現在でも生理学を学ぶ人々のテキスト的存在となっている不朽の名著『The Science of Human Life』(人間の生命科学)の著者、シルヴェスター・グラハム博士(1794~1851)は神学博士かつ生理学の専門家で、19世紀半ばにニューヨーク、シカゴ、ロンドン、パリなどの大都市でコレラが大流行したとき多くの人命を救った、ナチュラル・ハイジーン指導者のパイオニアの一人です。

「コレラ流行の原因は、肉や乳製品を中心とした食習慣やライフスタイルの誤りにある」と指摘、動物性食品や刺激物の食事をやめ、「新鮮な生の果物や野菜、新鮮な空気、純粋な水、そして日光」をとり入れることが、この病気の最善の予防策であると指導、各地で積極的に啓蒙活動を行なっていました。

当時の人々にとって、その内容は常識破りとも言える革新的なアドバイスでした。なぜなら当時の人は、栄養学や生理学、衛生学に関しては全く無知で、定期的に入浴して体を清潔に保つことも知らず、医学の専門家たちでさえ、生野菜や果物は体に毒で、特に果物は避けるべきであると主張していたからです。

医師たちは、野菜は必ず火を通し、肉や卵、牛乳、乳製品、白く精製されたパンやジャガイモを主食とするようにし、また病人には新鮮な空気や日光の光は毒だと指導していたのです。新聞は「果物や生野菜はコレラの要因なので危険」と報じ、各都市の行政はこれらの食品を販売禁止にしたり、市内への搬入を禁止するなどの条例を出していました。

従来どおりの食事をしていた人の多くがコレラで亡くなっていきましたが、グラハム博士のアドバイスに従った人々の中に、コレラで亡くなる人は一人もいなかったため、博士の指導は評判を呼び、講演会には遠方から何千人もの人が押しかけた、といいます。

ナチュラル・ハイジーン理論を治療にとり入れていたラッセル・タッカー・トゥロール博士(1812~1877)もまた、インフルエンザや肺炎、チフスや腸チフス、ジフテリア、はしか、赤痢、コレラ、天然痘、しょう紅熱、おたふく風邪などの病気で亡くなる患者が続出していた時期、博士の患者からは犠牲者を一人も出しませんでした。

博士は、空気、水、光、未精製未加工のプラントベースの食べ物、休養と睡眠、運動、適切な温度、清潔さなどを重視、当時大流行していた病気の予防・改善のためには、新鮮な果物や野菜の摂取を増やし、肉や牛乳、卵、白いパンやワイン、ニコチン、アルコールなどはとらないよう指導していたのです。

クリミア戦争(1853~1856)のときに活躍したことで知られるフローレンス・ナイチンゲール(1820~1910)もまた、ナチュラル・ハイジーンの教えを学んでいました。

野戦病院の軍医たちに、「病人には清潔な環境(新鮮な空気や水、快適な衣類)や快適な温度、十分な休養、正しい排泄習慣などが必要」と説き、多くの兵士の命を救っています。

ナイチンゲールが最初に行なったことは、締め切った病室の窓を開け、新鮮な空気と
日光を取り入れたことでした。入院中の兵士の多くは、戦争による負傷によるよりも、誤った生活習慣から来る病気のほうが多かったため、ナイチンゲールはハイジーン療法で多くの病人を回復させた、といいます。

彼女はまた、病気の原因は有害細菌ではなく、細菌の繁殖を許してしまう「誤った生活習慣」にあることを指摘、ナチュラル・ハイジーン理論の普及に努めました。

1918 年のスペイン風邪が世界的パンデミックを引き起こし、およそ 5000 万人が亡くなったとされたときも、ナチュラル・ハイジーンの医師の治療を受けた感染者は亡くならなかったという記録が残っています。以下は、その抜粋です。

米国ミネソタ州ハッチンソンにあったキリスト教系セブンスデー・アドベンティスト派神学校の寄宿舎で、180 人中 120 人の学生や教師らがスペイン風邪に感染、そのうち90 人ほどに症状が現われましたが、肺炎に進行する人も亡くなる人も一人としていなかった、といいます。治療に当たった医師と看護士たちはナチュラル・ハイジーンに基づく医療を施していたのです。

病気の症状が出た人はすぐさますべての活動を中止して床に就かせ、薬は与えず、水分補給と喉、胸、腹部への温湿布を施したところ、どの患者も1~2 日で熱は下がった、といいます。

再発を防ぐために、それから 2~5 日はベッドで休養、セブンスデー・アドベンティスト派では動物性食品の摂取はすすめていませんので、食事は完全にプラントベースでホールフードのヴィーガン食でした。

このことは『Northern Union Reaper』というセブンスデー・アドベンティスト派が発行している新聞(1918 年12 月17 日付け)に掲載され、同紙には「毎日何千人もの人がこの病気で亡くなっていくというのに、この神学校の寄宿生たちのおよそ90 人の患者に一人として深刻な状況に進展する人も死亡者も出なかったことは、注目すべき出来事だ。これは通常行なわれているインフルエンザ治療が無意味であること示している」と記されています。

ナチュラル・ハイジーンでは、病気のときは、すぐさますべての活動を中止し、薬は使わず、「Complete Rest」、つまり「完全休養」を指導しています。「完全に休養する」とは日常の仕事や運動などの活動停止とともに、「消化活動」の停止も含まれます。

つまり食事は一切とりません。食事をとると消化のために体のエネルギーや酵素が奪われ、ヒーリング活動が十分に行なわれなくなるからです。すべてのエネルギーや酵素の大半を、ヒーリングに差し向けることで、病気を早く治すことができるのです。

自然界の動物たちは、具合が悪いと食事はとらず、お水だけ飲んで、日当たりのよいところで静かに横になっています。人に飼われているペットの犬や猫でさえ、調子が悪いとどんな好物を与えても、見向きもしません。動物たちは何をすべきかを本能的に知 っているからでしょう。