2020年3月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston March 2020

日本のみなさん、こんにちは。

「日本人が食べる果物の量はアメリカ人の3分の1でしかない」ということをご存じでしょうか。アメリカ人の果物の平均摂取量は1日339.5グラム、一方、日本人(成人)の平均は1日100.9グラムでしかありません。

この数字は、つい最近発表された厚生労働省の「平成30年 国民健康・栄養調査結果の概要」によるもので、同省の推奨量200グラムのおよそ半分にすぎません。

さらに驚かされるのは、20代の果物摂取量が49.9グラムで、アメリカ人の平均摂取量の約7分の1でしかないことです。30代の日本人で54.9グラムでしかなく、20代以下では「週に一度も食べないことがある」という若者が6割を占めているといいます。

我が家のすぐ近くにあるホールフーズ・マーケットの青果物売り場に並ぶ、色とりどりのカップフルーツ。
店側の工夫で誰もが手軽にフルーツを手にとれるようにしています。

ビタミンCほかの抗酸化物質やファイトケミカルなどが豊富な色とりどりの果物は「生命の必需品」であるにもかかわらず、上記の摂取量を見れば、若者を含めた大半の人が果物の重要性を認識していないことがわかります。

世界五大医学誌の一つとして名高い『Lancet(ランセット)』誌の調査では、果物を十分食べていないことと、「死亡」「疾病や障害による健康寿命の短縮」とは密接に関連していることが明らかになっています(2019年5月号掲載)。

「塩の過剰摂取」や「全粒穀物の摂取不足」も、死亡や健康寿命と深く関係しています。「高塩分で食物繊維に欠ける精製穀物(白米、白いパン、白い麺類など)が主食」という日本人の典型的な食事の結果、日本では、胃ガン、高血圧、脳出血、大腸ガンなどによる死亡率が高いことは、多くの方がご存じでしょう。

しかし「果物の摂取不足」がガン、心臓血管疾患、糖尿病、アルツハイマー病、関節リウマチほかの自己免疫疾患などのリスクと関係していることを知っている人はまだ少ないようです。

見るからに食欲をそそるカットフルーツの取り合わせ。

果物は野菜と並んで、抗酸化物質の代表格であるビタミンCとファイトケミカルの宝庫です。私たち人類を含めた霊長類とモルモットなどの一部の哺乳類は、ビタミンCを体内で合成できないため、ビタミンCは食べ物から摂取しなければなりません。

日本人の場合、野菜の摂取量も厚生労働省の推奨量より圧倒的に少ないので、ビタミンCをはじめとする抗酸化栄養やファイトケミカルが大幅に不足しています。

体内における抗酸化栄養やファイトケミカルの働きは、抗酸化作用(フリーラジカルの活動阻止)、抗炎症作用、酵素の活性化、DNAの損傷阻止および修復の補助、アポトーシス作用(老化した細胞や変異細胞などの自然死促進)、抗エストロゲン作用など、さまざまです。

果物や野菜から抗酸化栄養やファイトケミカルを十分に摂取していないと、やがて組織が劣化し炎症を引き起こします。炎症はガン、心臓血管疾患、糖尿病、関節リウマチなどの自己免疫疾患、アルツハイマー病ほか、ありとあらゆる病気へと進展していくことになります。ほかのどんな食べ物よりも果物と野菜を多く摂取すべき理由です。

今日、医師も含めて多くの人が、「果物は太る、血糖値を上げる」と考えているようですが、これは正しくありません。今日の中高年者に急増している2型糖尿病において、血糖値が高い根本原因は、果物や砂糖、穀類にあるのではなく、「脂肪の過剰摂取」にあるのです。

このことはここ20年余りにわたる複数の研究によって裏付けられていますし、『チャイナ・スタディー』(グスコー出版)の第5章にも詳しく記されています。

流行している糖質制限ダイエットのように、炭水化物(糖質)の摂取を控えれば血糖値の上昇は抑えられますが、これは目先の減量と血糖値の低下だけを考えた愚かなアプローチです。

血糖値上昇の根本原因は、血液中の糖が細胞内に速やかにとり込まれるのを妨げている細胞内の「脂肪過剰」にあります。つまり「体が必要とする以上に脂肪をとりすぎている」ということです。

日本人(成人)の脂肪摂取量は年々増加の一途をたどり、今日では28.1%(総摂取エネルギー比率)となっていますが、それに比例して糖尿病の罹患率も死亡率も増加しています。脂肪の摂取量が7.7%にすぎなかった第2次大戦直後の1950年の糖尿病死亡率は2.4(人口10万人当たり2.4人)でしたが、今日では11.2(人口10万人当たり11.2人)と4.7倍にもなっています。

脂肪摂取量の増加は、日本人の炭水化物の摂取量を減少させ、1950年に比べ、現在では28%も少なくなっています。『チャイナ・スタディー』(第7章の図25)は、「炭水化物の摂取量が増えると、脂肪摂取量が低下し、糖尿病による死が激減する」ことを教えてくれています。

今日人々が聞かされていることとは裏腹に、果物は好きなだけ食べても血糖値の上昇にはつながりません。「果物に含まれる糖」(果糖)は、「抽出された果糖」とは違い、食物繊維とともに存在しているため、急激に血糖値を上昇させることはないのです。

果物と健康に関しては、『常識破りの超健康革命』や『フルモニ!』(いずれもグスコー出版)にくわしく記されていますので、ぜひご一読ください。みなさんの「果物と健康」に関する常識が変わることは間違いありません。

「果物は太る、体を冷やす、血糖値を上げる、食べる必要のないもの」といったこれまでの概念は、大きな誤りであることがわかるはずです。