2019年3月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D.in Houston, Mar.2019

 日本のみなさん、こんにちは。

 昨日、日本にいる親しい友人から届いたメールに、次のようなことが書かれていました。

 ――日本は肉漬けの狂乱文化に突入していますから、話になりません。最近、沖縄には安売りステーキハウスが次々と出現! 若者が安いステーキを貪るように食べています。沖縄ほどではありませんが、東京でも「あっ !そうだ ステーキ」をはじめ、安売りステーキハウスがかなり出現。いやはや、肉の需要は衰えを知りません。

 欧米社会では肉離れが進み、プラントベースの食事に変える人がますます増えてきているというのに、日本ではまったく反対のようです。

「アメリカにおける人口1人当たりの赤身肉・鶏肉の消費量」
(2007 年以降激減、1980 年代のレベルにまで低下しています)

 1990年代のアメリカでは、タバコが肺ガンの元であることが明らかにされて喫煙者が激減した際、タバコ業界は活路を日本や中国に求め、日本でアメリカ産のタバコを安売りし始めたことがありました。

 日本で「安売りステーキハウス」が激増しているのは、タバコの場合と同様、アメリカ人の肉の消費量が激減しているので、肉業界が日本へ盛んにステーキを売り込んでいるように思えてなりません。

 そう思えてならないのは、私の住むヒューストンでは、スーパーの食肉売場の面積が以前に比べ大幅に縮小される一方、果物・野菜売場の面積が広くなってきたことや、昼時のオフィス街ではサラダバーに長い行列ができているのを目のあたりにするからです。

 1980~90年代のアメリカでは、ランチといえばハンバーガーやホットドッグ、ピザなどのファストフード店がどこも満員でした。今でもここでランチをとる人が少なくありませんが、こうした店でさえベジタリアンやビーガンの人たちを意識してベジバーガーやサラダをメニューに加えています。

インターネット上では、動物性食品は肥満、ガン、糖尿病、心臓病、脳梗塞、アルツハイマー病、骨粗鬆症、関節リウマチほか、さまざまな病気の根本原因となっていることを裏付ける科学的なデータをもとに、著名な医師や栄養士らによる「プラントベースでホールフードの食習慣」を推奨するサミット(ネット会議)が、連日のように開催されています。

講師の面々には、ドキュメンタリー映画に登場したT・コリン・キャンベル博士やコールドウェル・エセルスティン博士、ニール・バーナード博士をはじめ、『食事のせいで、死なないために』(NHK出版)の著者、マイケル・グレガー博士など、錚々たるメンバーが名前を連ねています。

ネット上のこうしたサミットには誰もが無料でアクセスできるため、少なくとも高等教育をきちんと受けてきている人の多くが、ここに登場する医師や栄養士の話に耳を傾けています。

一方、日本では動物性食品(特に動物性タンパク質)とあらゆる病気との因果関係を科学的に裏付けた『チャイナ・スタディー』が刊行されて3年余りになりますが、いまだに医師や栄養士を含めて多くの人が、この本の存在さえも知りません。

『チャイナ・スタディー』

 また、この本の存在を知り読んだことのある人でさえ、「肉類をまったくとらない、というスタンスには賛同しかねる」という人が少なくないようです。

 日本がこうした状況にあるのは、知名度の高い医師が動物性食品の健康効果を強調し、マスコミやインターネットがそれを盛んに報じる一方、「プラントベースでホールフードの食事」を推奨する医師へのインタビューなどは報じないという不公平報道が大きな壁になっています。

 先日も、「動物性タンパク質をとればとるほど、ガンをはじめ、心臓血管疾患や糖尿病、骨粗鬆症、アルツハイマー病など、さまざまな慢性疾患のリスクが高くなる」というキャンベル博士の見解を私が管理するフェイスブック(松田麻美子の「超健康革命」)に掲載したところ、読者の一人から次のような投稿がありました。

 ──100歳を過ぎても現役の医師として大活躍していた聖路加国際病院名誉院長・故日野原重明先生の毎夕のメインディッシュは肉か魚で、週に2回はステーキを食べている。さらにカルシウム不足にならないために毎日牛乳を飲んでいる、と先生自身がテレビで語っていたことからも、肉や牛乳を排除する必要のないことは立証されている。

 名医として知られる日野原先生の発言は、「肉や牛乳が大好き」という人にとってはこれ以上ないお墨付きに違いありません。しかし、いつも葉巻を加え、朝からミモサ(ウォッカとオレンジジュースのカクテル)を飲んでいたにもかかわらず、90歳と3か月生きたイギリスのウィンストン・チャーチルの事例同様、日野原先生のような例はきわめて特殊なケースです。

 世界中で行なわれている「動物性食品の摂取習慣と健康に関する大規模な研究」は、いずれも肉や乳類をとる人はとらない人に比べ、ガンや心臓病で亡くなる人が圧倒的に多いことを示しています。

 世界には「肉類や乳類は健康長寿の敵」であることを裏付ける膨大な量の科学的エビデンスがあるにもかかわらず、日野原先生などの数少ない事例だけをもって「肉や牛乳を排除する必要のないことは立証されている」というには、視野が狭く説得力に欠けます。

 私が主宰する「超健康革命の会」の「会報」第81号(2019年4月号)に寄稿してくださった作家の船瀬俊介さんが、巻頭メッセージとして「栄養学にはまったく無知な医師が肉食をすすめ、それを動物性食品業界がこぞってサポートし、消費が減るような情報を決して報道しないマスコミが横行する日本の現状」に対し、痛烈に批判しています。

「超健康革命の会」の「会報」第81号(2019年4月号)第1面より。

 周知のとおり、船瀬さんは食品・医療・環境問題に広く取り組んでいるジャーナリストであり評論家でもあります。肉食を推奨するメディアの情報や安売りステーキハウスなどの広告に惹かれる前に、ぜひ船瀬さんの記事を一読されることをおすすめします。

 「超健康革命の会」の「会報」では、欧米の科学的エビデンスが裏付ける「動物性食品の摂取習慣と私たちの健康」に関する情報を毎回ご紹介しています。会の詳細につきましては、こちらをご覧ください。→ https://natural-hygiene.org/lifestyle/members/