2018年10月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston Oct 2018

 日本のみなさんこんにちは。

 前回のメッセージに掲載した「国際プラントベース栄養学ヘルスケア・カンファレンス(※)」について、もう少しご紹介させてください。

※International Plant-Based Nutrition Health Care Conference。カリフォルニア州サンディエゴにて、9月14日から17日まで開催された学術会議。主催は、医師や健康管理組織の専門家によって創設された「プラントリシャン・プロジェクト(Plantrician Project)」。今年が第6回。

 この会議の中で、特に印象づけられたのが、畜産業が主要産業となっているテキサス州西部の都市ミッドランドにある「ミッドランド・メモリアル病院」の紹介でした。
テキサスといえば、かつてジェームス・ディーンが主演した名画『ジャイアンツ』でも描かれていたように、「広大な牧場と石油産業」で知られる土地です。

 地元のオイルマンや牧場主、カウボーイたちの食事といえば、草鞋(わらじ)のように大きなステーキやバーベキュー、そしてチーズ(またはサワークリーム)をたっぷり載せたベークドポテトがお決まりのラインナップです。朝食の定番メニューは、バターをふんだんに使ったオムレツやスクランブルエッグです。

広大な牧場と石油産業を象徴する「テキサス」の代表的な光景とバターをふんだんに使った
野菜入りスクランブルエッグ(講演者、ストール博士のパワーポイントより)。

 そんな土地柄の場所にあって、ミッドランド・メモリアル病院の推奨する食事とは「テキサスの伝統的な食事」ではなく、「プラントベースの食事」だったのです。これは、テキサス州の病院としては初めてのことでした。

 テキサン(Texan)と呼ばれるお肉大好きのテキサス人たちでさえ、病院スタッフの指導で肉食をやめ、果物や野菜、種実類、豆類、イモ類、全穀物で構成された食事に変え、めざましい改善効果を上げているのです。こうした実例は、この会議に参加している医療関係者にとって、プラントベース栄養学に対する大きなモチベーションとなったことでしょう。

 会議の最終日には、医療保険団体カイザー・パーマネンテが運営する「南サクラメント・メディカルセンター」のラジブ・ミスクィッタ博士が、心理学者やヘルスエデュケ ータ―たちとチームを組んで行なっている食事指導法を紹介してくれました。

 ミスクィッタ博士は「革新的ライフスタイル・メディスン」部門の医長として、メタボや心臓病、糖尿病などの慢性病の改善にめざましい効果をあげていることを、患者さんたちの食生活改善前と改善後の「体重、血圧、血糖値、HgA1C値、コレステロール値、CRP値、中性脂肪値など」の数値を比較しながら、劇的な改善の様子を画像を使って披露してくれました。

ミスクィッタ博士たちの食事指導により、6か月で42ポンド(約19.1キロ)減量した
患者さんのビフォーアフター。

 このカンファレンスで行なわれた21 もの講演やパネルディスカッションは、いずれも、「私たちの社会に蔓延しているさまざまな病気やメタボは、食事を変えることで予防・改善、そして回復さえも可能である」というプラントベース栄養学ヘルスケアの正当性を強固にするものでした。

 講師やパネラーのみなさんは、世界的なベストセラー『チャイナ・スタディー』(グスコー出版刊)の著者、コリン・キャンベル博士をはじめとし、マイケル・グレガー博士(『病気のせいで死なないために』著者)ほか、「食と健康」の分野では世界一流の科学者や医師たちでした。

 私がこの会議に参加している頃、日本では、「肉食の人がいちばん長生きする」と主張する『長寿の嘘』という本が出版されたと聞きました。

 本の帯には、「医学博士渾身の一冊」「真のエビデンスに基づいた<長生きの新常識>とは?」といったコピーが記されているそうですが、今日、論文審査のある世界一流の科学雑誌のどこを見ても、肉食が健康長寿に役立つことを裏付けているものは一つとしてありません。

 また、本の中のプロフィール欄には記されていませんが、著者には「公益財団法人 日本食肉消費総合センター理事」という肩書きもあるそうです。

 みなさんには、「食と健康」に関する正しい知識を身につけていただき、「体は何を求めているのか」を、ぜひご自身で確かめていただきたい、と願っています。

 欧米の最新栄養学を学び合うことを使命のひとつにしている「超健康革命の会」では、業界の影響を受けない「健康・栄養情報」を広くご紹介しています。

 10月初旬に発行された「会報」第79号(本紙10ページ、付録カラー4ページ)では、漫画家のさくらももこさんの命を奪った「乳ガン」について巻頭3ページ半にわたり、くわしく書きました。ご興味のある方は、こちらをご覧ください。→https://natural-hygiene.org/lifestyle/members/