2018年9月のメッセージ

Hello from Mamiko Matsuda, Ph.D. in Houston Sep 2018

日本のみなさん、こんにちは。

9月14日から17日まで、カリフォルニア州サンディエゴで、「International Plant-Based Nutrition Health Care Conference」(国際プラントベース栄養学ヘルスケア・カンファレンス)が開催されました。
このカンファレンスは、「Plantrician Project」(プラントリシャン・プロジェクト (※))という組織が主催するもので、2013年の開催以来、今年で6回目を迎えました。

(※)医師や健康管理組織の専門家によって創設。

「国際プラントベース栄養学ヘルスケア・カンファレンス」初日のオープニング・ディナー。

「Plantrician」というのは、「Plant(植物)」と「Physician(医師)」あるいは「Clinician (臨床医)」を合わせた造語で、「プラントベースの食べ物の効用に関する知識を備えている医師」を意味します。
「プラントリシャン・プロジェクト」の目的は、プラントベースの食べ物の栄養が与えてくれる「偽りのない知識」を、医療従事者のみなさんに身に着けていただくことです。それによって、「病気のケア」という現在の医療システムを、真の意味での「ヘルスケア(健康管理)」に変えていくことを提唱しています。
「プラントベースでホールフードの食事」は一般的な治療法と比べ、費用効率が高く、安全、かつ強力な治療法です。この食事はさまざまな慢性病の予防や進行停止ばかりか、回復さえも可能なことが証明されています。

この食事が正しいことは膨大な科学的根拠によって裏付けられているにもかかわらず、ほとんどの医療従事者はそのことを知りません。そもそも「カイザー・パーマネンテ」(※)のような全米最大の管理医療組織が、傘下の医師らに対し「プラントベースの食事」を患者にすすめるようアドバイスしているにもかかわらず、多くの医療従事者がそうした知識を持ち合わせていないというのが、このプロジェクト発足以前の状況でした。

(※)カリフォルニア州オークランドに本部を置く、全米最大の医療組織。38か所のメディカルセンターと620か所のクリニックを有する。従業員およそ18万人、医師およそ1万8,000人、看護師およそ4万9,000人で構成。

そのため、医療は薬や手術による症状の緩和や病変部の除去に終始しており、ほとんどの患者も、それ以上の治療法はないと思っています。

その結果、病人も医療費も増加の一途をたどっていて、慢性の病気がもたらす経済への負担は計り知れず、その膨大な額は軽視することができないほどです。もし医療従事者のみなさんがプラントベースの栄養学を理解し、多くの人に伝えたならば、こうした現状を一変させることも可能なのです。

こうした状況下で、「プラントリシャン・プロジェクト」は、医療従事者を対象に2013年から毎年、「国際プラントベース栄養学ヘルスケア・カンファレンス」を開催することになったのです。

第1回の参加者は世界6か国からの220名だったのが、年々増加し、今年は20数か国からおよそ1000人もの医療従事者が参集、会場は「真の栄養学を熟知する医師」をめざす人たちの熱気であふれていました。

カンファレンス初日、「プラントリシャン・プロジェクト」の共同創設者で医療主任を務めるスコット・ストール医学博士の基調講演が行なわれ、「プラントベースでホールフードの食事」について学んだ医師らが、病院に「プラントベース栄養学に基づくヘルスケア・システム」を導入し、すばらしい成果をあげている例がいくつか紹介されていました。

基調講演中のスコット・ストール博士。

医師らはまず病院のスタッフを指導してプロジェクトチームを作り、次に患者や地域の住人を対象に、「プラントベース栄養学」の講座や料理教室、ポットラック・パーテ ィー、食料品店での「買い物実習」などを定期的に開催し、情報提供やサポートを行な ったり、菜園を作り、野菜の育て方や収穫した野菜の食べ方を教えたりしています。
入院患者用の食事には「プラントベース」の選択肢が用意され、病室のテレビでは、ドキュメンタリー映画 『フォークス・オーバー・ナイブズ』が放映されているといいます。

患者たちの食生活改善後の体重や血液検査結果は目をみはるほどすばらしい内容で、降圧剤、コレステロール低下薬、インスリンなどの投薬量は大幅に減少、あるいは不要になり、医療費も大幅に削減されたそうです。