キャンベル博士からのメッセージ

みなさん、こんにちは。

ヘルスエデュケーターの松田麻美子です。世界中が新型コロナウイルスという姿の見えない敵と戦っていますが、みなさんやご家族、友人など、周囲のみなさんは大丈夫でしょうか。

これを書いている2020年4月12日午後8時現在、感染者数が世界最多の56万人を超えている私の住むアメリカでは 、人々が不安と恐怖が交錯した不穏な日々を送っています。

そんななか、「プラントベース栄養学」や「ライフスタイルメディスン」を重視する医師や健康のエキスパートらが、感染拡大防止に対処する最強の武器は免疫力アップに努めることであり、それを可能にするのが「プラントベースでホールフードの食事」であることを、インターネット上で異口同音に伝えています。

そのうちの一人、T.コリン.キャンベル博士の『FLATTEN THE CURVE:Our Most Important Defense Against COVID-19: Finding Hope Through Scientific Evidence』と題する小論をみなさんにもご紹介したいと思います。(文責・松田麻美子)

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(以下、キャンベル博士からのメッセージです)
 

FLATTEN THE CURVE:
Our Most Important Defense Against
COVID-19: Finding Hope Through Scientific Evidence
感染者数の増加を抑えるために
COVID-19(新型コロナウイルス)-最も重要な防衛策とは:
科学が裏付ける証拠から希望を見いだす

文明社会から離れて暮らしていない限り、私たちは今、COVID-19(新型コロナウイルス)のために恐るべき犠牲が余儀なくされています。事態は悪化の一途をたどっていますが、暗黒な時であることは間違いありません。

しかし「食と栄養と健康」分野で65年のキャリアがある研究者として、私にはこの問題に対処するのに役立つ考えがありますのでお話ししたいと思います。まずはソーシャルディスタンス(人と接触するときの距離)をとるようにという勧告を受け入れることから始め、次に私がここで提案する新しいことについて知る時間をとっていただけたらと思います。

その新しいこととは、希望に満ちた、そして画期的でさえもある提案です。各自が行なう食事選択で免疫力を強化することで、COVID-19感染による最悪の影響から身を守り、激増中の入院患者を減らすことができるということです。

60歳以上の人ですでに何らかの病気がある人は、COVID-19に感染しやすいということや、これらのほとんどの病気は不適切な栄養摂取の結果である、ということは周知のとおりです。

今日私たちがこのような困難な状況にあるのは、長年の間、業界、政府、そして学界が健康に関する最も重要な「真実」を隠してきたためです。その「真実」とは、「プラントベースでホールフード(野菜、果物、全穀物、豆類、種実類)で構成された食事は、薬や医療処置などのすべてを合わせたものよりも、より健康な体をつくることができる」ということを示す信じられないほど膨大な量の証拠があるということです。

この食事はいわゆる慢性の変性疾患(心臓血管疾患、糖尿病,脳卒中、ガンなど)を予防できるばかりか、これらの病気の多くを治療できることを、私の大胆な発言を裏付ける証拠の数々が示しているのです。この食事の病気に対する効果については、過去の文献に見ることができます(※1)

このことは、今日のコロナ危機に関しては、特に説得力が増します。私が思うに、「プラントベースでホールフードの食事」の有益な効果は、COVID-19のようなウイルス性疾患にも当てはまることを示す、すばらしい証拠があるのです。
 その証拠とは、1)私の研究室で1970年から1990年にかけて行なった研究結果、2)1980年代に中国農村部の住人らを対象に2度にわたって行なった「食習慣とライフスタイルと病気」に関する包括的な研究からの補足的な証拠、そして3)研究者らによる食べ物とウイルス感染に関する特定の証拠です(※2〜※4)


 
(https://plantpurecommunities.org/defense-against-covid-19/)
https://youtu.be/LfO2CBruqu8  

研究室から中国の農村部での研究に至るまで

主にNIH米国国立衛生研究所の資金提供によって行なわれ、論文審査のある専門誌に大々的に発表された我々の実験動物を用いた研究が、控えめの量の動物性タンパク質でさえ、動物にガンを成長させる驚くべき能力があることを示していました。

動物タンパクの量を増やすか、あるいは減らす、または植物タンパクに置き換えることによって、ガンの成長は交互に「ON」にしたり「OFF」にしたりすることができたのです。この効果は我々の研究室で行なったほかの研究によっても確認されました。

詳細は『チャイナ・スタディー』(グスコー出版)第3章をご覧ください。

これらの研究で我々は、複数の解説可能なメカニズムが互いに協力し合い、多数の栄養素の活動を調整し、さまざまな病気に作用していることに気づいたのです。そこで私は、研究室で明らかになった「動物タンパクとガンやおそらくほかの慢性変性疾患との関係」を中国で確認することにしました。

1980年代に行なわれた大規模なヒトを対象にした研究で、コーネル大学の我々のチームと中国やオックスフォード大学の私の同僚たちは、膨大な量の臨床データ、ライフスタイルデータ、さらにおよそ48種の病気の疾患死亡率のデータなどを収集しました。研究は我々の実験室での研究に基づくもので、367項目の情報を含む非常に包括的なものでした。

栄養情報や臨床情報の中には、3つのウイルス性疾患、およびこれらと相互に関連のある病気も含まれています。「B型肝炎ウイルス」と「原発性肝ガン」、「EB(エプスタイン・バール)ウイルス」と「食道ガンと鼻咽頭ガン」、そして「パピローマ・ウイルスとヘルペス・ウイルス」と「子宮頸ガン」などです(※5)

慢性疾患からウイルス感染まで

食習慣とウイルス性疾患に関しては、中国でのヒトを対象とした研究でも、研究室での研究でも、我々は「B型肝炎ウイルス」と「肝臓ガン」に関して最も詳細に調べました。実験室では、B型肝炎ウイルス遺伝子を持つハツカネズミを使いました。このウイルスはヒトに肝臓ガンを引き起こすのと同様に、動物にも肝臓ガンを引き起こすものです。

当時私はすでに、動物タンパクは、化学発ガン物質によって引き起こされる肝臓ガンの成長を著しく促進することに気がついていて、B型肝炎ウイルスによって引き起こされるガンの成長にも作用するだろうか、という疑問を持っていました。動物を使った実験で調べたところ、結果はウイルスで引き起こされる肝臓ガンも、化学発ガン物質で引き起こされる場合と同様に注目に値するものでした。

動物タンパクの摂取量を増やすと、ウイルスによって開始された肝臓ガンの発生は、生化学的な検査マーカー(※)とともに大幅に増加したのです。この検査マーカーは動物タンパクの影響を説明し、確認するのに役立つものです(※6〜※9))。
 (※)病状や生命体の状態を客観的に測定し評価するための指標。

動物タンパクは、B型肝炎ウイルスによって引き起こされた肝臓ガンの発生も大幅に増加させていたのです。このことはまた、中国農村部での研究(※9)、および台湾で行なった追跡研究(※10)における、ウイルスと栄養が関与するヒトの肝臓ガンとの関連性とも一致していました。

「プラントベースの食事はB型肝炎ウイルスによる肝臓ガンを抑制する」ということは、プラントベースの栄養には慢性変性疾患との関係以上の何かがあるように私には思われました。B型肝炎ウイルスによる肝臓ガンを阻止するのに加えて、プラントベースの食事からの栄養は、抗体の産生を増やしてウイルスを不活性化することによって、ウイルスの作用を変えるようです。さもなければ、B型肝炎ウイルスは、絶えず新たなガンを発生させるでしょうから。

実際我々は、中国での最初の研究(チャイナ・プロジェクト)から6年後に行なった追跡研究で、さらなる決定的な証拠を発見したのです。

この研究では再び最初の研究と同じ村と郡からデータを集め、さらに中国本土のほかの郡と台湾の32の村からのデータを加えました。これらのデータは次のことをさまざまな方法で示していました。

植物性食品の摂取量が多いと、B型肝炎ウイルス抗体の量が多くなり(免疫力の増加を示すもの)、B型肝炎ウイルス抗原(活発なウイルスを示すもの)の量は少なくなったことと、統計的に関連していました(※10)。こうしてウイルスに対して免疫力を高めていたのです。

血液中の抗酸化物質濃度が高いことばかりか、ビタミンB1、植物タンパク、食物繊維、多価不飽和脂肪酸など(これらの要素はすべて植物性食品から来るもの)の摂取量が多いことは、血液中の活発なウイルス量が少なく、不活発なウイルス量が多いことと関連していました。このことはつまり、血液中の抗原の量が少なくなり、抗体の量が増え、免疫力が高くなったことを意味しているのです。この関係はすべて統計的に優位なものでした。

逆もまた然りでした。動物性食品を摂取した場合では、示していることが植物性食品の場合とは逆だったのです。
中国での観察研究で最も印象的だったのは、動物性食品の摂取量がアメリカの標準からするとかなり少ないにもかかわらず、なおも血液中の活発なウイルス(すなわち抗原)量が多いことと関連していたことでした。

私がこれを書いているとき、ウイルスに対する免疫を伝統的な製薬技法でつくれないか、その可能性に関する研究が必要だという記事が、「ニューヨーク・タイムズ」紙にちょうど掲載されました(※11)
 しかし我々コーネル大学と中国、オックスフォード大学の同僚らが共同で行なった研究で、我々は薬によってではなく、栄養摂取、つまりプラントベースの食べ物をより多く摂取することによって、ウイルスに対する免疫はいかに高められるかを示す証拠を30年以上も前に得ているのです。

「栄養摂取でウイルスへの免疫力を高める」とはどういうことか?

一口に言えば、こういうことです。
「プラントベースでホールフードの食事」は、
①高齢者をCOVID-19(新型コロナウイルス感染症。以下同様)に感染しやすくしてしまう慢性の変性疾患の予防、そしておそらく回復も可能にする。
②同時にCOVID-19そのものを不活性化することによって、免疫力を高める。

とはいえ、「プラントベースでホールフードの食事」をすれば、COVID-19に感染しないという意味ではありません。しかし、感染による最悪な影響を避けるための防衛力を高めてくれるはずです。そうすることで、入院患者の増加のスピードを抑えるのにつながります。

これは説得力のある提案です。特に今、コロナ危機打開に直結する適切な提案だと思います。イタリアとニューヨーク市から出された死亡率データは、イタリアとニューヨーク市でCOVID-19によって亡くなった人(ほとんどは高齢者)のそれぞれ99%(※12)と95%が、すでに基礎疾患で苦しんでいたことを示しています。この基礎疾患は、ほとんどの場合、生涯にわたる誤った栄養摂取がもたらすものなのです。

 

科学について考えるとき、私は常に
生物学をもっと直感的に理解することに立ち返るようにしている

 

栄養に関して「リダクショニスト」(要素還元主義/還元主義/細分主義)の考え方ではなく、「ホリスティック」(全体主義)な考え方で見たとき、「プラントベースでホールフードの食事」に見られる免疫力を高める効果は、驚くにはあたりません。

正しい食事をすれば、私たちは健康状態を最善のものにすることができます。以上です。それ以上言う必要はありません。
 自然は、ウイルス性疾患のような急性疾患とは対極にある、慢性の変性疾患になるような栄養的効果など用意しなかったはずです(※13)

もしみなさんが、COVID-19危機が収まるまで自宅待機をしていて時間があるようでしたら、栄養が与えてくれるこの驚くべき健康改善効果について学ぶ時間をいくらかとってみてはどうでしょうか。経験ほど偉大な教育法はありません。栄養が与えてくれるこの健康効果を経験するために、せめて10日間だけでもプラントベースの食事をしてみてはどうでしょう。

以前に比べると、今ではプラントベースの食事をするのがずっと楽にできる、いろいろな食べ物があります。そしてもちろん、自分で作るのであれば、たくさんのレシピが料理の本やインターネット上に紹介されています。

「栄養摂取をウイルス感染と結びつける」というかなり斬新なこの提案を、通常でしたらこれまでしてきたように専門誌に提出するところですが、今は時間がありません。もしみなさんに時間がおありでしたら、専門誌への提出を試してみていただけたらと思います。

キャンベル博士

著者について
T・コリン・キャンベル博士は、ニューヨーク・タイムズのベストセラー『チャイナ・スタディー』の共著者であり、栄養科学の分野で60年以上の経験を持つ生物学/栄養学研究者です。博士はまた、コーネル大学の栄養生化学部の名誉教授であるジェイコブグルード・シュウマンであり、T・コリン・キャンベル栄養研究センター、およびeCornell(コーネル大学のオンライン学習プログラム)と提携している、オンラインの「プラントベース栄養学受講証明書付きコース」の創設者です。

謝辞
 この記事の掲載に貢献してくれたネルソン・キャンベル氏、ならびに以前私の研究グループに参加してくれた多くの研究者のみなさんに心からお礼申し上げます。

(注)
※1.Campbell, T. C. & Campbell, T. M. I. The China Study, startling implications for diet, weight loss and long-term health. Expanded Version, pp. 290-291
451 (BenBella Books, Inc., 2005).
※2.Muller, L., Meyer, M., Bauer, R. N., Zhou, H.-X., Zhang, H., Jones, S. et al. Effect of broccoli sprouts and live attenuated influenza virus on peripheral blood natural killer cells: a randomized, double blind study. PlosOne (2016).
※3.McAnulty, L. S., Nieman, D. C., Dumke, C. L., Shooter, D. A., Henson, A. C., Milne, G. et al. Effect of blueberry ingestion on natural killer cell counts, oxidative stress, and inflammation prior to and after 2.5 H of running. Appl. Physiol. Nutr. Metab. 36, 976-984 (2011).
※4.Majdalawieh, A. F. & Carr, R. I. In vitro investigation of the potential immunomodulatory and anti-cancer activities of black pepper (Piper nigrum) and cardamom (Elettaria cardamomum). J. Med Food 13, 371-381 (2010).
※5.Chen, J., Campbell, T. C., Li, J. & Peto, R. Diet, life-style and mortality in China. A study of the characteristics of 65 Chinese counties. (Oxford University Press; Cornell University Press; People’s Medical Publishing House, 1990).
※6.Cheng, Z., Hu, J., King, J., Jay, G. & Campbell, T. C. Inhibition of hepatocellular carcinoma development in hepatitis B virus transfected mice by low dietary casein. Hepatology 26, 1351-1354 (1997).
※7.Hu, J., Chisari, F. V. & Campbell, T. C. Modulating effect of dietary protein on transgene expression in hepatitis B virus (HBV) transgenic mice. Cancer Research35, 104Abs (1994).
※8.Hu, J., Cheng, Z., Chisari, F. V., Vu, T. H., Hoffman, A. R. & Campbell, T. C. Repression of hepatitis B virus (HBV) transgene and HBV-induced liver injury by low protein diet. Oncogene 15, 2795-2801 (1997).
※9.Campbell, T. C., Chen, J., Liu, C., Li, J. & Parpia, B. Non-association of aflatoxin with primary liver cancer in a cross-sectional ecologic survey in the People’s Republic of China. Cancer Res.50, 6882-6893 (1990).
※10.Chen, J., Campbell, T. C., Li, B. & Peto, R. Diet, life-style and mortality in mainland China and Taiwan. A study of the characteristics of 85 Chinese counties. (Harvard University, 1998).
※11.Mandavilli, A. Can you become immune to the Coronavirus? New York Times (March 25, 2020).
※12.Salo, J. Over 99% of coronavirus patients in Italy who die had other health problems. New York Post Mar 18, 2020.
※13.Campbell, T. C. Nutrition renaissance and public health policy. J. Nutr. Biology 3, 124-138, doi:DOI:10.1080/01635581.2017.1339094 (2017) (2017).

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(以下、文責・松田麻美子)

この小論文は、「Plantpure Communities」というグループのウェブサイトに掲載されたものです。https://plantpurecommunities.org/

翻訳機能を利用すればある程度の意味はとれますが、みなさんに平易な日本語でお読みいただけるよう、担当者ならびにキャンベル博士の許可をいただき、日本語文にしてご紹介させていただきました。

この組織は、「プラントベースでホールフードの食事」を通して、より強靭で健康なそしてさらにサステイナブルなコミュニティを築くことをめざしており、4月19日より10日間、「The Global 10-Day Jumpstart」(「グローバル10日間ジャンプスタート」)と題するプログラムをインターネットで開催します。

このプログラムは、COVID-19パンデミックと戦うために、「プラントベースでホールフードの食事」で人々が免疫力を強化するのを手助けすることをめざしています。その食事とは野菜、果物、全穀物、豆類、種実類などで構成されたものです。

先にご紹介したように、最近発表されたT.コリン.キャンベル博士の小論によると、「プラントベースでホールフードの食事をすれば、COVID-19に感染しないという意味ではありませんが、感染による最悪な影響を避けるための防衛力を高めてくれる」といいます。

「グローバル10日間ジャンプスタート」では、プラントベースの食事が与えてくれるパワーについて、セミナー、クッキングクラス、毎日のEメール、ウェビナーほかを用いてご紹介する予定です。全コース無料です! 4月19日の日曜日開始です。ご登録はこちらです。https://plantpurecommunities.org/global-jumpstart/ただし英語であることをご了承ください。

なお、キャンベル博士の小論をご覧になりましたら、2017年10月に東京で行われたキャンベル博士の講演のDVDをご覧いただくと、キャンベル博士が私たちに伝えようとしていることへの理解をさらに深めていただけることと思います。

こちらでお求めになれます。

http://natshell-34.com/shopdetail/000000000299/

 

また、みなさんがまだ『チャイナ・スタディー』(グスコー出版)をご覧にならっていらっしゃらないようでしたら、感染拡大防止のために「STAY AT HOME」が求められている今こそ、絶好の読書タイムになると思います。厚い本ですが、きっとみなさんの人生を変えることになるはずです。

https://gsco-publishing.jp/books/h-thechinastudy/